公共R不動産では、2018年9月28日に第1回となる『公共空間 逆プロポーザル』を開催しました!
お荷物施設と言われる公共施設を「お宝」物件に変えよう、そのために柔軟な発想を持つ民間プレイヤーと自治体とのマッチングの場を提供してみよう、という妄想から始まったこの企画。民間から自治体に向けて「公共空間でこんなことしたい」というプレゼンを行い、このアイデアを我が街で実現したい!と思った自治体が手を上げる、という逆転の発想のプロポーザルです。
公共R不動産でも、そしてたぶん日本でも初めての試み。さてさて、どうなるかな……と思っていたら、当日はオレンジ色の「いいね!」うちわで会場がオレンジ色に染まるほど大盛り上がりでした!
「プロセスの変革なくして、公共空間の変革はない!」の言葉を皮切りに、時代のトレンドを創る豪華な6組のプレゼンテーターと、43の自治体とで始まったイベントの全容をご紹介します。
馬場正尊の講演「日本の公共空間を使い倒す」からスタート!
イベントはまず、公共R不動産ディレクターの馬場正尊が今回の企画が生まれた経緯と先進事例を紹介するところから始まりました。
公共R不動産では、昨年から「民間の力で公共空間を楽しく変える」をテーマに「パブリック・アライアンス・トーク(PA)」を開催してきました。カフェ・カンパニー代表の楠本修二郎さん、連続起業家の孫泰蔵さんなど、時代の最先端を行く経営者たちが公共空間をより面白くするためのアイデアを語る、というもの。その方々の構想力がすごすぎて、これが公共空間に反映されたらもっと面白くなるのに!というものばかりだったのですが、皆さん口を揃えて「自治体とどうコミュニケーションして活用していけばいいのか」と。「もったいない!」「何とかこのギャップを埋められないか」という気持ちで、6月に発刊した“公共R不動産のプロジェクトスタディ”内のコラムで「スター誕生」を元ネタに考えた「逆提案プレゼンFES」を考え、それを形にしてみようと企画したのが「公共空間 逆プロポ」のはじまりです。
「今日のプレゼン内容は、行政の既成概念から飛び出し過ぎていて自治体側は反応できないかもしれない。でも勇気をもって行ってしまえ!というくらいの気持ちでプラカードを上げてほしい」とメッセージ。実際にはそんな懸念も不要なほど、自治体側からどんどんプラカードが上がることになるわけですが、参加された自治体の方々へのメッセージとして馬場は続けます。
「公共不動産の可能性を探ろう!自治体側も思い切って手を上げてしまいましょう!今日はきっかけを作る日だ!」
時代のトレンドを創る、そうそうたる民間事業者がプレゼン
民間事業者として公共空間活用についてプレゼンテーションしたのは次の6人です。
・野尻 佳孝さん(株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役会長)
・石塚 健朗さん(株式会社SCRAP 新規事業部プロデューサー)
・佐別当 隆志さん(一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局長/
株式会社ガイアックス ブランド推進室/株式会社mazel 代表取締役/内閣官房 シェアリングエコノミー伝道師)
・生明 弘好さん(株式会社良品計画 執行役員/ソーシャルグッド事業部長)
・佐藤 剛史さん(株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ プロデューサー)
・柳澤 大輔さん(株式会社カヤック 代表取締役CEO)/新子 明希さん
(株式会社シンクスマイル 代表取締役)
テイクアンドギヴ・ニーズ野尻さんのプレゼンは、文化財のような趣ある物件があればなんでも使いたい!と。例えば……と具体的な施設名が次々と出てくる提案はすぐに活用のイメージができ、自治体のプラカードも次々と上がりました。
続いてはSCRAPの石塚さんです。SCRAPはさまざまな施設を利用した「リアル脱出ゲーム」で一世を風靡している会社ですが、そのノウハウを全国の地方都市や公共施設で展開しようというもの。既に愛知県の郊外にある展示施設を会場にしたイベントでは27,000人を集めたという実績もあり、「ワケあり物件や事故物件もおいしい」という石塚さんのコメントに「それもあり!?」のツッコミが入る場面もありました。
3番目は、一般社団法人シェアリングエコノミー協会の事務局長を務めながら、実際にシェアリングの事業を展開しているmazelの佐別当さん。地域に眠る住宅を活用して、多くの人々が住まいを周遊する、新しいシェアリングエコノミーの形を見せてくださいました!
4番目はご存じ、無印良品ブランドを展開する良品計画の生明さんです。社会的課題に向き合い、公営住宅を活用した未来のコミュニティ像を発表してくださいました。馬場も「社会問題をえぐるネタで無印良品がくるとは!」と驚きを隠せません。
つづいてオレンジ・アンド・パートナーズの佐藤さん。小山薫堂さんが率いるこのプランニング・カンパニーからは、新たな宿泊の形が提案されました。自治体に「物件出して」と事前にお願いしている当イベントで「そもそも物件すらいらない」発想に、自治体側からも具体的な地名をあげた猛アピールが行われました。
プレゼンの最後を飾るのは、カヤックの柳澤さんとシンクスマイルの新子さん。2人の掛け合いがコントを見るような愉快な雰囲気に、笑いっぱなしのプレゼンは新しいアプリの活用提案。自治体からのプラカードが上がらない、という事態に「本音でやらせ感がちっともない」と笑いの渦が巻き起こりました。
こんな感じでプレゼンは笑いあり、本音ありのものになりました。「こんな物件お待ちしてます!」と物件を具体的に逆指名されたり、コメンテーターから「それもありなの!?」とツッコミが入るようなアイデアまで。
コメンテーターの一人、特定非営利活動法人日本PFI・PPP協会 業務部長の寺沢弘樹さんはプレゼンテーターのアイデアに「●●市さんを紹介しましょう」と実際にニーズが合いそうな自治体の名前がどんどん上がります。
大阪府四條畷市の副市長でもある林有理さんはコメンテーターとしての立場を置いて、四條畷市の副市長としてプレゼンテーターに熱烈アピールをする場面が多々!
プレゼンが終わるたびに用意されたオレンジ色の「いいね!」うちわがドワッ!と上がって、会場がオレンジに染まります。うちわを振って「大賛成!」を表現するという新たなアクションまで会場の中から勝手に湧き出てきて、参加者一人ひとりが会場の空気を創る、そんなアツイ時間となりました!
そして肝心の自治体ですが、なんと毎回たくさんのプラカードが!それぞれの自治体からコメントをしてもらう時間が足りずに、プラカードを上げた自治体間で時間の奪い合いが起こる場面も見られました。途中、進行から「話す案件は2つまででお願いします!」とアナウンスを入れたり、馬場が「つまんない物件だったらばさっと省略しましょう、今日はそういう場だから」とけん制コメントを入れるほど。
各自治体からは「この出会いは運命だと思ってます!」「うち僻地です!」「飯だけはうまいです!」と営業魂むき出しでの猛攻アピールが起こっていました。
「時間が足りない!」プレゼンも、休み時間も、終了後も熱気冷めやらず
まさに「ライブ」としてうちわのアクションが生まれたり、最後には飛び入り参加のゲストまで登場!
LIFULL HOME’S 総研所長の島原万丈さんは「ありそうでなかったしくみ」「こんなマッチングが起きればもっともっと日本は、自治体は変わっていく」とコメント。
PARK-PFIを作った元国交省都市局公園緑地・景観課長の町田誠さんからは、「『法令に照らし合わせると』みたいなくだらない話をやめましょう」「迷惑かからなければ別にいいじゃん、やっちゃえば!」という刺激的な言葉も飛び出します。
プレゼンやコメントの時間は、盛り上がりすぎて話が終わらず、つねに「時間終了」のベルが鳴り響く状況になりました。最後に設けられた名刺交換タイムはもちろん、プレゼンの最中や休み時間中にも盛んに名刺交換をする姿が見られました。プレゼンテーターはもちろん、参加者間でもどんどん挨拶と情報交換が始まります。
プレゼンテーター、コメンテーター、参加者全員のノリの良いリアクションと、ユーモアを交えた受け答え、そして何より様々なものを背負いながらプラカードを上げた自治体の勇気のおかげで、心から楽しいイベントになりました!
公共R 不動産を始めて3 年、そこに⾯⽩い公共空間があるのに⺠間企業に的確に届けられないこと、案件をメディアに載せるだけでも様々なハードルがあることを実感し、それを突き崩さなければ抜本的な公共空間の改⾰は無い、と思ってきました。既存のシステムや⼿続きを批判するのは簡単です。けれども、それよりもユーモアやポジティブな空気を作ってムーブメント化していこう!というのが公共R不動産らしいスタンス。
これがきっかけとなり1 つでも多く具体的なプロジェクトとして進むよう、これからも公共不動産活用を盛り上げていきます。民間プレイヤーも自体も同じ船に乗る気持ちで、既存の重たいシステムも突破し、⼀緒に楽しみながら⾛っていきましょう!