個人や民間企業が公共不動産を活用する時代へ
近年、人口減少によって、遊休化した公共不動産が急増しています。自治体は民間企業や個人に向けて公共不動産の情報を公開し、活用者を募り、公民連携による公共不動産の活用が進んでいます。
遊休化した公共不動産のなかで、最も注目を集めているのが廃校(学校)です。廃校の活用方法として、アートや文化、新たな産業の担い手のための人材育成の場、宿泊機能を備えた研修場、地域観光などの拠点、食品製造のファクトリーなど、学校のイメージからは飛躍した幅広い用途がみられます。
施設のタイプも多岐に渡り、学校以外にも幼稚園・保育園、公民館、図書館、体育館、青少年自然の家などさまざまな種類の建物が生まれ変わっているほか、遊休化した公共不動産だけでなく、低稼働の公共施設をリニューアルしたり、PFI*などによる施設整備の手法も多様化しています。
*PFI(Private Finance Initiative)とは、従来のように自治体が直接施設を整備せずに、民間資金を利用して民間に施設整備と公共サービスの提供をゆだねる手法のこと。民間事業者が自ら資金を調達し、自治体はサービスの対価として契約期間中に支払いを行う。
公共不動産を探す方法『公共不動産データベース(公共DB)』
公共不動産を探す方法のひとつとして、公共R不動産が提供する『公共不動産データベース(公共DB)』があります。一般的に遊休化した公共不動産の情報は各自治体の公式サイトに掲載されていますが、ひとつひとつ自治体のサイトを訪問して物件情報を探し出すのは大変です。
『公共DB』は、全国で活用募集している公共不動産の情報を一元化しており、写真が大きくて見やすく、エリアや物件カテゴリなどの条件を絞って物件を検索できます。一般的な不動産サイトのように公共不動産が探せるのが特徴です。
公共不動産データベース(公共DB)
https://db.realpublicestate.jp
※物件の詳細をご覧になるためには、会員登録が必要になります(登録無料)。
民間不動産と公共不動産の違い
公共不動産を活用するにあたって、事前に民間不動産との違いを留意しておきたいところです。
まず、公共不動産にはまちのシンボルを受け継ぐことができたり、恵まれた立地で事業ができたり、さらには物件の特性や地域のニーズを考慮した事業プランを立てることで、自治体をパートナーとして地域と共に発展する事業展開も可能になるというメリットがあります。
ところが、民間不動産の売買や賃貸借とは違い、公共不動産の活用には手間と時間がかかるというデメリットがあるのもまた事実。契約までに1年以上を要するケースが多く、契約後や事業開始後もさまざまな制約が発生する場合もあります(ただし、公共DBには「1年以内に契約可能」と表示されている物件もあり)。
こうした公共不動産のメリット・デメリットを総合的に考えて、事業プランを立てていくことがポイントです。
『公共不動産データベース』掲載物件の3つのステイタス
『公共DB』に掲載中の物件は、物件ごとにステイタス(状況)が異なり、主に以下の3種類のステイタスがあります。賃貸や売却の諸条件が決まっている物件もあれば、これから活用方針を検討していくものもあり、契約までに要する時間もさまざまです。
①入札受付中
事前に参加資格の審査があり、通過した事業者のみが入札に参加できます。競争入札・先着順など、物件ごとに申込方法は異なります。用途に関して制約条件が課されるケースもあるので、詳しくは各自治体の窓口にお問い合わせください。手続きは異なるものの、3つの中ではもっとも民間不動産の売買に近いかたちと言えるかもしれません。
②公募中
自治体が作成した公募要項に準じて民間事業者が事業プランを提案します。公共施設を運営するための指定管理者を公募するケースもあります。公益性のある事業プランと自治体が描く実現したいビジョンが重なり合っている場合はおすすめです。
③提案受付中
賃貸か売却か、公募をするかなど、今後の活用方針を検討中の段階。なおかつ自治体が民間事業者と対話をする準備がある状態です。自治体がサウンディング型市場調査を行い、民間事業者の声をもとに公募要項が作成されたり、民間提案制度を採用している自治体では民間事業者から提案されたアイディアをもとに事業が進んでいくケースもあります。
気になる物件があれば、まずは「決定プロセス」の欄や、タイトルに記載された【サウンディング型市場調査実施中】などの文言を見て、物件のステイタスを確認してみてください。
公共不動産のユニークな活用事例
公共不動産の活用を検討するにあたって、国内外の活用事例を知ることも有効です。全国で多種多様な活用事例が生まれているので、物件の特性を生かした事業内容や公民連携の体制などに注目してご覧ください。
HAPPY NUTS DAY(千葉県山武市)
千葉県山武市の旧蓮沼幼稚園を活用したピーナッツバター工場。公共DBをきっかけに物件と出会ったというプロジェクトです。地域から新しい食品ブランドを生み出していく事業プランと、それをサポートするためにスピード感と柔軟性を持って対応した山武市による公民連携がポイント。
NATURE STUDIO(神戸市兵庫区)
地元の工務店が代表となって推進した廃校活用プロジェクト。水族館、クラフトビールのブルワリー、フードホール、ハーブショップ、学童などが集結した複合施設です。廃校活用というと「外部からの集客」、もしくは「地元コミュニティの醸成」そのどちらかに偏るケースが多いなかで、独自のコンテンツの組み合わせによってそれらを両立させています。
泊まれる公園 INN THE PARK(静岡県沼津市)
沼津市立少年自然の家をコンバージョンして誕生したINN THE PARK。“公園に泊まる”という新しい体験を提供している宿泊施設です。公園と宿泊施設を一体化させ、行政との契約を組み合わせた事業スキームによって、新しい公園のあり方を生み出す実験場ともなっています。
そのほか、連載「公共R不動産のプロジェクトスタディ」では、全国の公共不動産の活用事例を取材しています。プロジェクトの背景やプロセス、多様な事業内容までレポートしています。
具体的に公共不動産の活用をご検討の方へ
公共R不動産とは、日本の公共空間をアップデートしていく実践型メディアです。
メディアを入り口として公共不動産のユニークな活用事例や物件情報を発信するほか、公共空間活用のスペシャリストたちが在籍し、公共空間活用を促進するためのさまざまなサービスを行っています。
公共R不動産は、公共不動産の活用を希望する民間事業者と自治体をつなぐ役割を担っています。自治体との連携や、プロジェクトの推進を支援することも可能です。
・自治体と接点をもったことがないので、どうアプローチすべきか知りたい
・公共不動産を活用した事業を検討中だが、企画からサポートしてほしい
・公共不動産を利用した事業展開のスキームを検討したい
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