公共R不動産のプロジェクトスタディ
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“街の裏側”を変えた台湾の廃路線
鐵花村、台東山海鐵馬道

緑に囲まれた鐵花村の風景

台湾の小さな街、台東市に素敵な場所を見つけました。元々は台湾鉄道の土地だった場所。使われなくなった駅やターミナルは音楽&アートビレッジ鐵花村」になり、廃線になった線路は街をぐるっと巡るウォーキング&サイクリングトレイル「台東山海鐵馬道」に生まれ変わっていました。

鐵花村では毎晩パフォーマンスが行われ、まわりを囲む屋台には工芸品や地元の食べ物が溢れます。鐵花村で音楽をきいて、そこから伸びるトレイルをサイクリングしたり歩いたり。住人も観光客も一緒に楽しむ、とてものどかな景色が広がっていました。

原住民が一番多い音楽の街、台東

台東市は、台湾の東南にある人口10万人ほどの小さな街。台湾の友人にいわせると、アクセスがしづらい、だからこそ土着の文化が強く残る場所だそうです。台湾は多民族国家としても有名ですが、とくにこの台東は原住民が多く住む場所と言われいて、原住民音楽に溢れています。阿美族という、歌が上手な民族が多く住むのもこのエリアなんです。

廃路線が、住人に愛されるウォーキング&サイクリングトレイルに

駅が使われなくなったということは、そこに伸びる線路も廃線になっています。台東の人達はこの線路の半分を木製デッキにして、街の外周をぐるりとまわるウォーキング&サイクリングトレイルに繋げました。

観光客としてトレイルを自転車で走っていると、いつの間にか昔の駅のホームに登っていたり、次の観光スポットにたどり着いたり…昔と今が一体になったルートが生まれていました。かつての車両も芝生に置かれ、子供たちの遊び場になっていました。

このトレイルは、地元住人にとっては毎日のウォーキング場所。台湾では公園や学校で運動している人をよく見かけますが、台東も例に漏れず、というよりも、他の街より沢山の老若男女が、夜遅くまでお喋りしながらトレイルを歩いているように見受けられました。その光景がとても楽しそうで、この場所がどれだけ住人に愛されているか伝わるようでした。

勝手に増えるオープンスペース

自転車で走っていると、面白い場所を幾つか見かけました。隣接した家がデッキを広げてブランコを設置したり、バーが裏庭にテラス席をつくって、裏口をトレイルに繋げていました。ウォーキングする人が足を止めて、そこでまたお喋りに花が咲いています。

一つのバーに入ってオーナーに話を聞いてみました。”バーの立地は、必ずしも街の中心とはいえない場所。だけどこのトレイルができたことで、裏口がポテンシャルになるのではないか” と思ったとのことでした。

元々、隣接する建物は全部、線路に背を向けて建っていました。ところが裏側に歩行空間が生まれて人通りが増え、それにお店の人達が気づいたことで、勝手に新しいオープンスペースが生まれ続けているんですね。
これは素敵な公共空間プロジェクト!街の人も観光客もみんなハッピーです。こんな場所、自分の街にほしいですね。(写真:内田友紀)

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