愛知県豊田市で、ペデストリアンデッキにアバンギャルドな古材のステージが登場し、パンクロッカーが熱唱、ビールを飲む人、踊る人。スケートボードパークも出現…!!と思ったら、なんとこの企画、仕掛人は豊田市と再開発ビルの管理者率いる意外とおカタいプロジェクトチーム。
その名も「あそべるとよたプロジェクト」
まちなかを本気であそぶ、つかいこなす!というスローガンのもと、10月から1ヶ月間、駅周辺の道路や公園等9つの公共空間をオープン化し、カフェ、朝ヨガ、木育、ジャグリングなど31の多彩なプロジェクトが展開するという壮大な社会実験でした。一見、普通のイベントに見えるかもしれないんですが、色々と奇跡が隠されていましたよ〜。
奇跡①つくる人=使い方を考える人に
豊田市には、充実した公共空間がある。でもふと気づくと、全然使われていない。それは、使われ方を想定せずに建ててきたからじゃないか…という反省のもと、普段はハード担当の都市整備部が、率先してソフトの使い方を考えるこの企画をリードしたという。第一の奇跡は前代未聞の担当部署。
さらに、将来的には公共空間を使いこなす担い手自身が広場を運営したり、使い手の立場でハードを提案するというプロセスの変革も目論んでおられるそうで、つくる人=使う人の連鎖は続く…!
奇跡②ペデの赤線の意味
とはいえ、公共空間を使うには色々な障害も。例えばペデストリアンデッキは、車道上空の歩行者専用道路。つまり道路交通法が適用されるエリアので、営業行為は難しい。従って今回、なんと一部を道路から「広場」という扱いに変換して規制緩和を図ったそうな!
規制緩和に到るまでには、本プロジェクトの企画段階で、プチ社会実験「座れるデッキWEEK」を実施。ただの通り道と化していたペデストリアンデッキにテーブルと椅子を設置し、果たして利用者がいるのか観察したそう。すると、不思議なもので、親子連れや高校生がわらわらと…!その結果データに基づいて庁内調整をすすめ、今回のあそべるとよたDAYS開催につながったとのこと。
カフェ周りのビニールテープの赤線は、血のにじむような努力の跡だったのです。
奇跡③ シームレスな空間利用
今回オープン化した9つの空地、実は公有地だけでなく、民有地も併せて活用しています。ポテンシャルがフルに発揮されていない空地の状況は公も民も一緒。それに、利用する側の市民からすると誰が所有しているかなんてあまり関係ないですもんね。でも、この公民合わせ技が意外とハードル高いんです。
民有地にはそれぞれ既存の決まりがあったので、ひとつずつ交渉して利用ルールや料金を統一し、公民、全て同じスキームのもと解放してもらうことができたそうです。公と民の空地が分け隔てなくつながったからこそ演出できた一体感。まちじゅうで盛り上がっている感じが伝わり、インパクトも強かったのだと思います。
奇跡④ 本来の民主主義的に立ち返る
最大の奇跡がこの仕組み。お膳立てされたブースに出店する小作農タイプの通常イベントとは全く違い、市が提供するのは場所だけ。あとは公募で手を挙げた事業者・市民団体が利用料を市に支払い、一部材料費の補助はあるものの必要な機材も設備も基本的にはぜ〜んぶ自己負担という!
今までは用意されたイベントに出店者として参加していた応募者に対し、今回は事前に分厚いマニュアルを手渡し徹底的に利用の心得を説明したそうです。一部不満の意見も出たのですが、ここで「万一のとき自分達で責任をとることで、自分達の自由を増やすことができる。そのために、みなさんに責任を預けているのだ」とプロジェクトの思想を説明。
そこから目の色が変わり、同じスペースを使う利用者同士が資材を融通し合ったり、自発的にゴミを拾うように。受身だった利用者の意識が当事者へと変化したそうです。
行政も民間も関係なく、同じゴールのためにそれぞれが役割を全うする。依存関係でも、敵対関係でもなく、それはまさしくチームのようでした。義務と権利、責任と自由の再構築。今後、この関係性がどんな風に発展していくのか楽しみです!