廃校活用の先駆けプロジェクト
ニューヨークといえばMoMA(ニューヨーク近代美術館)は有名ですが、その分館がクイーンズにあるのをご存知でしたか?
その名はP.S.1(Public School1)。日本で言う第一小学校。
廃校活用の先駆けといえるこのプロジェクトは、当時のアートシーンを揺るがしただけでなく、この地にシティバンク本店やMoMAを引き寄せ、世界に大きな影響を与えました。
第一小学校から、現代アートの発信地へ
当時の第一小学校は、ニューヨークの中でも、イーストリバーの向こう側の地味な地域にある、うち捨てられた廃校。1963年にその役目を終え、市により売却・解体が予定されていました。
そこに目をつけたのが、市内の倉庫などを使い、非営利のアートスペースを複数運営していた、the Institute for Art and Urban Resources Inc.(芸術と都市資源機構)のアラナ・ハイス氏。1年以上にわたる市との交渉を経て、長期貸借契約締結にこぎつけ、133,000ドルをかけてボロボロの廃校を改修しました。
そして1976年にオープニングで行った「Rooms」という企画展が大ヒット。リチャード・セラやジェームズ・タレルなど、今日では巨匠となったアーティストの、サイトスペシフィックな作品が教室に展示され、大きな反響を呼びました。
その後も国内外のアーティストに製作スタジオとして教室を貸し出すなど、ここから多くの若いアーティストたちが巣立ち、2000年にはMoMAと提携、その分館として今日に至ります。
P.S.1のプロジェクトは、廃校が現代美術のギャラリーやアトリエとしてうってつけであることを示し、学校の再生がアートシーンと街の再生の両方を牽引した、記念碑的な事例といえるでしょう。
まさに教室!なカフェも
訪れた日は雪。悪天候の平日午後にもかかわらず、ひっきりなしに人が訪れていました。校庭を横切り、美術館の中へ。館内のレストラン「M.Wells Dinette」も教室をそのまま再利用。メニューは黒板に、お食事は学習机で並んでいただきます。机にはノートと鉛筆まで入っていて心憎い。気分はすっかり学生時代のお昼休みに。
P.S.1はMoMAのチケットがあれば無料で入れますので、(レストランはチケット不要)ニューヨークにお越しの際は訪れてみては。