世界の公共空間から、シンガポールの公営フードセンター、「ホーカーセンター」のご紹介です。
露天商を集めて
ポイ捨てしたら罰金、クリーンなことで知られるシンガポールですが、1960年代まで、ホーカー(HAWKER)と呼ばれる行商人たちが、公共空間を埋め尽くしていていました。川沿いに所狭しと立ち並ぶ沢山の露店は、人々の生活には欠かせない存在でありながら、衛生的に問題が。
そこでシンガポール政府は、独立後の1965年以降、行商人の露店を「ホーカーセンター」という建物をつくって移設しました。その数約2万5千人。市街地では、保健省(現在は、環境庁)によって各民族コミュニティをベースとして、郊外のニュータウンや工業団地では、都市再開発庁(URA)のマスタープランに基づき設置されたホーカーセンターは、人々の生活に不可欠な都市施設としてその存在価値を高めていきます。
1990年代になると施設の老朽化が目立つように。そこで政府は2001年から、4億2000万シンガポールドルを投じて、「ホーカーセンター・アップグレード・プログラム」を実施。トイレや換気などの設備更新だけでなく、地域のニーズに合わせた改修や建替えを推し進めました。2014年には106のホーカーセンターのアップグレードが完了。プログラム実施後の調査では94%の人が「新しくなったホーカーセンターに満足」と答えているそうです。(その成果を環境庁のHPでしっかりアピールしているのもお国柄でしょうか。日本の自治体も見習いたいところ。)
官民の適度な競争
社会福祉施設としての機能も持ち、価格も抑えめのホーカーセンターですが、近隣には民間のフードコートも沢山あり、適度な競争が行われているのもポイント。(共働き世帯がほとんどのシンガポールでは、三食外食も多いので需要もあります。)
民間のフードコートとホーカーセンターの最大の違いは、クーラーがないこと。ホーカーセンターには換気用の天井ファンしかないので、キンキンに涼しいところで食べたい時は民間フードコートへと、うまく棲み分けができているようです。
ビジネス街のど真ん中にあるホーカーセンターに行ってみた!
アップグレード前の屋台村みたいなホーカーセンターも、きっと旅情があったんだろうなと思いつつ、毎日使う場所としては、清潔で新しいフードセンターはなかなかに魅力的。
訪れたダウンタウンにあるラオパサフェスティバルマーケットも、お昼時はビシッとワイシャツ姿のビジネスマンが大勢ランチを楽しんでいました。
1894年に建てられたビクトリア朝様式の建物の中に作られたホーカーセンターは観光客にも大人気。2014年に前述のプログラムによりリニューアルしたセンター内には、シンガポール料理はもちろん、インド、中華、マレー、日本料理も大充実。ハンバーガショップまであって目移りします。
さらに、日が暮れると、センターの前に沢山の屋台が展開。
道路に机を並べて、シンガポールの長く熱い夜の始まりです。(なんと24時間営業!)
シンガポールにいらした際は、ぜひホーカーセンターで地元民の気分を味わってみては。