前川國男の名建築
京都会館が、「ロームシアター京都」としてリニューアルされました。ホール部分が改築され、蔦屋書店にスターバックスコーヒー、レストラン(京都モダンテラス)を併設。中庭は「ロームスクエア」として整備され、子どもが遊べるオブジェや、レンタサイクルも。岡崎公園、平安神宮へも緩やかにつながり、京都の新名所になる予感です。
このロームシアター京都、改修費用を補填するために、施設にネーミングライツ(命名権)が設定されたことも話題を呼びました。
今回はロームシアター京都の事例をもとに、自治体による命名権ビジネスについて紐解きます。
ネーミングライツ(命名権)って?
「ネーミングライツ」とは、公共施設などの名称に、企業の社名やブランド名を付与する権利、いわゆる「命名権」と呼ばれるもののことを言います。
日産スタジアム(横浜国際総合競技場)、C.C.Lemonホール(契約終了後「渋谷公会堂」に名称を戻した)、TOYO TIRES ターンパイクからMAZDA ターンパイク箱根へと変遷した箱根ターンパイクなど、皆さんの近所にも、企業が命名権を購入して名前が変わった施設がありませんか?
命名権の売買は、1973年にアメリカで、フットボールスタジアム建設時に、新スタジアムの命名権を企業に買ってもらい、その代金を建設費に充てたのが始まりと言われています。
日本では2003年に味の素スタジアム(東京スタジアム)で、公共施設としてははじめて導入されました。以降自治体の新しい収入源として注目され、近年では多くの自治体が導入するように。
命名権の相場
自治体のホームページを見ると、スポーツスタジアム、文化施設などにはじまり、公衆トイレや歩道橋、海水浴場まで、様々な施設の命名権が売りに出されており、果たして買う人がいるんだろうかと勝手に心配になるものも。
元々知名度の高い施設であれば、購入企業側も広告効果を狙って高額な契約料を支払うことができ、ウィンウィンなこの仕組み。
ただ、発祥の地アメリカに比べ、日本の命名権事業は契約期間の平均が4.4年(アメリカは18.3年)、単年度の契約金額平均は約2000万円(アメリカは295万USD)と、期間も金額も圧倒的に短く少ないのが課題とされてきました。
京都市はここがすごい
翻って今回の京都会館の命名権。
期間50年、金額は52億円。期間、金額とも日本最長・最大と言われています。京都に本拠を置く総合半導体メーカーであるローム株式会社が契約、「ロームシアター京都」として生まれ変わりました。
長く愛され、定着してこその命名権、今回は本来の手法の目的を果たせる形で実現したといえるのではないでしょうか。
ちなみに京都市では、対象となる施設等や応募期間を設けず、命名権に関する提案を常時受け付けています。
また、渋谷区や和光市では、命名権を付与するかわりに、命名企業が施設の維持管理をする事例も。命名権はまだまだビジネスの可能性を秘めているんですね。
岡崎エリアの新名所に
訪れた日は、お隣の岡崎公園で手づくり市が行われていました。観光客、地元の人、ホールのイベントに訪れた人などが入り混じって、なんだかいい雰囲気。中庭のロームスクエアでは、オブジェで遊ぶ子どもたちの前で、ダンスパフォーマンスが行われていたり。本屋さんで京都の情報を仕入れて、レンタサイクルでまち歩きに繰り出すのもよさそうです。
京都に行かれたら、一度立ち寄ってみては。