公共R不動産を立ち上げて1年。初年度とは思えないほどいろいろな相談をいただきました。その中で、たくさんの発見がありましたが、改めて公共空間がルールでがんじがらめになっていて活用が進まない原因も実感しました。そのひとつは、「公平性」の名のもとに、自治体が過剰に住民の反応を気にしていること。クレームは行政に届くけれど、「こんな素敵な公園にしてくれて。ありがとう。」なんてエールの声は行政に届かない。
クレーマーのネガティブな声ではなく、サイレントマジョリティのポジティブな意見を引き出して行政に届ける機会ができたら、もっとわくわくするような住民合意形成パターンのひとつになりうるかもしれない。そんな想いで実際に場を持つことに挑戦した5/14の1DAY RePUBLIC アイディアコンペ。当日集まった参加者でチームになり、あるエリアを楽しくつかいこなすアイディアを考え、プレゼンテーションして競い合う。最優秀案は実現に向けて公共Rがサポートするというもの。今回は当日の模様をお伝えします!
流山市の事業者提案制度を使いこなす
会場として選んだのは流山市。なんせ、流山市は業界で一世を風靡した(?)事業者提案制度なる画期的な制度をもっておりまして。流山市の新たな財政支出をともなわない、あるいは抑制するような提案であれば、どんな提案であっても受付け検討後、妥当性があれば本格協議に入り、公募を経ずに契約にいたるという仕組み。つまり、今回のアイディアコンペで提案された事業案を受け取ってくれる窓口があるということ。その制度に乗っけてみんなのいいねを実現することを目指すことにしました。
(図は公共R不動産作。詳しくは流山市website参照)
駅前ストリート&パークのポテンシャルを生かそう
流山おおたかの森駅はつくばエクスプレスの開通に伴い2005年に開業した駅で、このエリアもそれと同時に開発された非常に新しいまち。あちこちにクレーンが立ちマンションがにょきにょきと並んでいます。人口増加も著しく、特に東京に通勤する子育て世帯が中心、まちとしては非常に恵まれているといえます。
しかし、いかんせん新しいこともあって、やや人口的でつるっとした印象。このまちにもっと人が関わっていけるようなcommonな空間をつくろう、というテーマで、アイディアを競い合いました。対象としたエリアは流山市おおたかの森駅の南側。駅で降車するたくさんのお客さんは、どわーっと隣接するショッピングセンターの空中回廊に吸い込まれ、乗降者数の割に駅前に歩行者が少ない。さらにその先の広い公園と分断されており、まちの顔とも言える駅前と公園空間のポテンシャルが十分に発揮できていない状況でした。
当日の模様
集まった参加者は約30名。ざっくりと半数程度は東京から、あと半分が千葉県内と流山市内からの参加でした。新しい試みにドキドキしていた私たちの心配とは裏腹に、あっという間に定員に達していしまったほど、多くの方からご応募いただきました。
プログラムはお昼過ぎからスタート。1DAYといえど、実際は3時間程度のワークショップで、大忙しです。6人×5チームに分かれ、チームごとにエリア散策。地域資源を発掘したり、まちかどインタビューをおこなったり、フィールドリサーチをすすめました。
その後、会場に戻りアイディアを練り、プレゼンテーション。初めて会ったはずのチームなのに、なんとなくファシリテーター役が決まり、手際よく資料作成を分担して、資料をサクサクとつくりあげていくという…なんとも不思議な光景でした。
いよいよプレゼンテーション!
各チームの発表はこんな感じ。
Bチーム「まちをつくるなら、流山市。プロジェクト」人口は増加しているものの、コミュニティが少なく、あっても分散しているという状況に対し、今回のアイディアコンペのような場を恒常的につくり、「こうなったらいいな」という想いを、市民自らお金やアイディアを出してつくりだすプラットフォームを設立するという案。
続いてDチーム「毋にっこり、流山市(いち)」。もともとの地元住民と転入者の交流がないという課題を、朝市や夕市というマルシェを開催し、そこで地元の農家さんと新住民たちの交流を図りつつ、地産地消を進めていくというもの。
三番手はCチーム「PUBLIC GREEN PROJECT」。流山市のキャッチコピーである「都心から一番近い森のまち」とは裏腹に、緑のうるおいの少ない現状に対し、公園にmy 芝生を植えたり、食べられる植物を歩道の花壇に植えていったり。身近なグリーンを増やしつつ、それをコミュニケーションの場にしていくという取り組みの提案。アーバンガーデン的なやるですね。
そしてAチーム「夢見る森」。新住民が多い一方で多様性に乏しい、また公共空間の整備も進んでないため、まちへの参画意識を持ちにくいという状況を「じぶんが主役になれる街」に改善する提案。市民のシェア本棚や、カフェの出店を夢見る人のための貸店舗、映画上映やキャンプファイヤーなど公園を使いこなすコンテンツと、それを4年間の運営計画と資金計画(クラウドファンディングと出店料など)の発表でした。
最後はEチーム「地縁リアクション」。駅、公園、池の3つのステージにわけ、いろいろなコンテンツ(例えば逆観光協会、週末ショップ、ベビー保育、結婚式など)が各ステージで変化し、多様な年齢層を対象にした幅広いコンテンツを生み出していくしかけをつくるというもの。こちらも各コンテンツの出店料から事業費の捻出を検討していました。
カオスな結果発表
今回のコンペでは2つの賞を用意しました。ひとつが「流山賞」。参加者と会場に取材や応援にきてくださった方が投票し、その得票数で決定します。2つ目が「公共R不動産賞」こちらは公共R不動産代表の馬場正尊敬が総合的に判断して最優秀賞を決め、その後公共Rチームが実現に向けサポートするというもの。
会場の投票により、流山賞は見事Eチームの地縁リアクションに決定。気になる公共R不動産は…なんと、全部!審査員長である馬場曰く、「編集者としての視点で今回の提案を見ると、全部一緒に実現できるはず。今回の参加者の熱量、スキルを見ても、当事者意識のある人も多く、実現できてしまいそうなメンバーが集まっている。ぜひ、このメンバーで実現してしまおう!」という。…もう、カオスです。
というわけで、今回の提案をどう編集しどんな組織で次のステップにつなげていくのか、公共R不動産がサポートにはいりつつ、参加者の中の有志でプロジェクトをすすめていくこととなりました。今後も継続してコミットしていきたいと回答してくれた参加者がなんと15名/30名。半数の参加者がなんらか自分も実現の力になりたいと考えてくれたことがとてもうれしかったです。
今回多かった感想としては、「まちにいるプレーヤー同士がなかなかつながる機会がなかったのでよいきっかけになった」また、「引っ越してきたけれど住んでいるだけで、町にかかわるタイミングもなく愛着もなかった。けれど、地域のことを知り、好きになる可能性を感じた」などなど。活用アイディア以前に、まちの使い方に関心のある人たちが一同に会し、まちについて、commonな空間に対して議論をする場自体に大きな意味があることを感じました。今後も、ボトムアップでの公共空間活用改革の挑戦は続きます!