盛岡のベッドタウン、紫波町。
その駅前の広大な空き地は、駅前開発のために町が購入したものの、バブル崩壊後、ながらくほったらかしになっていた、いわゆる塩漬けの土地というやつです。
しかし最近、この土地にとある異変が。3万人弱の町に、年間80万人ものお客さんが殺到しているというのです!その発端となったのが「オガールプロジェクト」(おがる=東北の方言で「育つ」)。10ha以上もの空き地を複数のゾーンに分割し、カラーの異なるコンテンツを数年かけて徐々につくりあげていくものです。
はじまりは儲からないものから
サッカー場からはじまり、交流プラザ(図書館、スタジオ、マルシェ、居酒屋、塾等)と広場、バレーボール場、ホテル。現在は、エコ住宅を分譲中で、ゆくゆくは役場も移転してくる予定とか。そもそも駅前といったらショッピングモールにマンション…ではなくて、むしろ一見「儲からなそうなもの」から町を育てている感覚がおもしろい。素敵な町になれば、人は集まる。そうすれば、お金は循環するという急がば回れ戦略といえそうです。
なんといってもオガール成功の秘訣は、民間がリードして、補助金なしでパブリックな空間づくりを実現している仕組み。補助金不要どころか、月々300万円程の賃料まで町に納めているそうです。
収益を上げながら、公共空間を実現する
という、一件矛盾したプロジェクト実現には、様々な工夫が。例えば、交流プラザ。全て民間で建てたのち、図書館部分は町が買い戻すというスキームです。役所にとっては非常に効率的な投資方法により、民間としてもトータルで利用者の満足度の高い空間を実現するというwin-winの絶妙なコーディネーション。また、設計前からテナント先決めで、無駄が起こりえないジャストなサイズ感と、欲張らない資金計画も成功ポイント。前代未聞ながら、いちいち筋が通ってるところがニクい。
このご時世にも関わらず、人口は増加に転じ、地価も上昇の兆しとのこと。まだまだ続くオガールプロジェクト。これからも目が離せません。