マーケットづくりのプロが手掛けるマーケット
ニューヨークのミッドタウン、33丁目とブロードウェイが交差する三角形の広場で、夏と秋に開催されるマーケット、「ブロードウェイ・バイツ(Broadway Bites)」。ずらりと並ぶ屋台では、タコス、ピザ、ホットドック、その他世界各国の様々な料理、お酒の飲めるバー、さらに、ジェラートやマカロンなどのデザートまで、ニューヨークのB級グルメを一度に楽しめるとあって、毎年多くの人で賑わう人気のイベントです。人気の裏には、運営のプロの存在が。その名も「Urbanspace」。探ってみると、この人たちがすごかった!今回は、このプロ集団をご紹介します。
マーケット運営のプロ集団
「Urbanspace」は、1993年にイギリスからやってきたエルドン・スコット氏が立ち上げた、ニューヨーク市内で数多くのマーケットを運営する会社です。母体となったイギリスの Urban Space Management という会社は、1970年の設立以来、40年以上にわたり、50以上の地域で、うらぶれたエリアの刷新、歴史的な建物の保存、コミュニティのための新しい場づくりなどを行ってきました。(カムデンロック、ビショップゲート、スピタルフィールズなどなど、再生したエリアは今や名だたる名所ばかり。こちらも追々ご紹介します。)
ユニオンスクエア・ホリデーマーケットをはじめとした4つのホリデーマーケット(クリスマスシーズンのマーケット)の運営をはじめ、2015年にはUrbanspace Vanderbilt というフードコートをグランドセントラル駅の近くにオープンし、大きな話題を集めました。
エリック氏が語る、マーケット成功の秘訣
設立者のエリック氏はかつて、マーケット成功の秘訣について、The Center for an Urban Futureのインタビューで、以下のように語っています。
「小売りという観点では、多様性とユニークさを大事にしている。可能な限り沢山の、本当に小さな個人商店とベンダーとして付き合い、商品と売り方については彼らに完全に任せている。そうすることで、普通のショッピングモールでは見つけられないようなユニークで一風変わったものをそろえることができるんだ。」
ベンダーの構成
「ユニオンスクエア・ホリデーマーケットでは、75%がニューヨーク、25%が海外。85%が女性やマイノリティ。3分の1が新規のベンダーで、3分の2はリピーター。そのうち半分は10年以上の付き合いさ。他のストリートフェアとは一線を画すために、どこのフェアでもあるようなお店は絶対に出店させない。
全てのベンダーを面談して、商品サンプルか写真、新商品ならスケッチを持て来てもらっている。クラフトショーみたいにはしたくないから、審査はしないけど、デパートがベストな商品ラインナップを決めるときみたいな感覚でやっている。そしてすべてのベンダーを男性向け、女性向け、ジュエリー、子供服、ペット関連、ファインアートなどにカテゴライズして、偏りがないかをチェックするんだ。100の枠に150くらいの応募がある。マンネリ化しないよう、毎年新しいものを仕入れてもらうように気を配っている。」
価格帯を抑える
「雰囲気はニューヨークのストリートライフを実感してもらえるように心がけているよ。あとは費用面だね。より多くの消費者に訴求できるように、ベンダーは価格設定を抑えめにしている。
マンハッタンで大きな店舗を年単位で借りてやるのとは違うから、コストがかからないし、マンハッタンのど真ん中で、書き入れ時にやるわけだから売上は見込める。だから10ドルから30ドルのレンジでできるのさ。小さな店でも出店できるよう、出店料はできるだけ抑えている。(最小区画で6000ドルから)
そして最も大事なのはコミュニティ感だね。そして場所の感覚を作り上げること。陳腐な表現かもしれないけど、本当にそうなんだ。ベンダーとアクティビティーを取り揃えて、来たいと思わせる目的地にするんだ。」
意義あるマーケットにするために
「ニューヨークにはまだまだいろんな規模のマーケットを開催できる余地がある。でもロケーションが大事だ。建築家や都市計画家が陥りがちなミスとして、どこでもマーケットをやろうとするのがあるけど、マーケットはどこでもワークするわけじゃないんだ。ベンダーが商品を売り切れるような場所を提供すること、そして客足が保証されているわけではないから、ベンダーだけに任せきりにしないことだ。」
2008年のインタビュー記事ですが、今でも十分参考になる金言が詰まっている気がしますね。
日本でも成熟しつつあるマーケット文化。こんなプレイヤーが、どんどん現れるとまちはもっと楽しくなりそうですね。