今年も川床増えました。
気持ち良さそうな川辺のテラス、京都鴨川で有名な川にせり出した床のことを川床という。この風景が楽しめるのは、大阪の中之島対岸にある北浜エリア。毎年3月下旬に川開きが行われ、このテラスで食事を楽しむことができる。大阪の夜景を楽しみながら、涼しい風を感じる、なにより流れていく川を眺めているだけでも、日常とは離れた時間を体験できる。2015年には9つの川床がオープンする。
水辺開放を象徴
何気ない風景のように見えて、この写真は水辺開放を象徴している。私有地に設置したテラスが、公共財の堤防の上まで伸びているからだ。最近まで、この空間をカフェの一部として営業することは、正式には違法だった。しかし社会実験の一環として、私有地と公共の河川空間をつなぐ場の有効活用が提案され、それを実現している。社会的なコンセンサスが得られれば、決められたエリアにおいてこのような活動が可能となった。
前例のない社会実験を動かした組織。
北浜テラスは大阪中之島を対岸に眺める土佐堀川左岸北浜地区にある。河川法では河川敷地で飲食施設等の営利利用・常時占用を許可していない。北浜テラスの実現には、河川沿いのビルや店舗のオーナーとNPO団体が河川に背を向けたビルにテラスを設ける絵を描くところから始まっている。2007~2008年頃、NPO法人水辺のまち再生プロジェクト、NPO法人もうひとつの旅クラブらが、河川沿いのビルオーナーと河川管理者に実現へ向けた相談を持ちかける。NPO、オーナー両者の思いは一致する。ビルオーナー、NPOチームがそれぞれ工事用足場を利用して川床の可能性を模索、検証する。このような自発的な実験を経ることで、プロジェクトは大きく動く。北浜テラス実行委員会を店舗オーナー、ビルオーナー、NPOらで組織し、プロジェクトの主体とした。2008年当時、大阪府・大阪市・経済界が水辺を活性化する政策「水都大阪」を進めていた。そこで、北浜テラスを実現するために、北浜テラス実行委員会と水都大阪2009実行委員会の間で協力体制が組まれた。組織同士が連携する体制にしたことが重要だ。
民間と行政がタッグ
これにより、2008年、2009年の二度にわたる社会実験と水都大阪2009での実施を経て、河川敷地の包括占用主体として、北浜テラス実行委員会のメンバーを中心に任意団体「北浜水辺協議会」が発足し、現在に至っている。北浜テラスから学べるのは、実行者であるビルオーナー、店舗オーナー、サポート役のNPO、管理者の行政、四者のベクトルを合わせるプロセスと組織のつくり方。このプロジェクトがきっかけとなり、このエリアに新しい店が増え、大阪の新たな名所の一つとして育っている。
こんな気持ちよさそうな場所が、都市のなかにどんどんできてほしい。
写真提供:北浜水辺協議会