広島県三次市で2016年9月と11月の2回にわたって行われたワークショップ、「三次町エリアリノベーション」プロジェクト。前編では4チームが魅力的な空き家を発掘する2チームと、三次市の地域資源を発掘する2チームに分かれ、三次に眠る潜在力の引き出し作業を行いました。第2回はそれを活かし、どのような事業を展開するのかのアイディアを作り上げます。レポート後編ではワークショップの様子と後日レポートをお送りします。
発掘した材料を放り込み化学反応を起こす
第2回のワークショップは11月5日(土)、6日(日)に行われました。
1日目の午前は、ゲストレクチャラーとして若手建築家 SUPPOSE DESIGN OFFICEの谷尻誠さんにご登壇いただき、「アイディアの作り方」について講演していただきました。実は谷尻さん、本プロジェクトのコアターゲットエリアである三次市三次町のご出身なんです!次から次へと繰り広げられる、あっと人を驚かすような建築作品のコンセプトは、いったいどのように生み出されているのか?頭の中で起きているプロセスを直々に教えてもらう贅沢な機会となりました。
午後からはワークショップへ突入。第1回とは別の4チームに分かれ、実在する物件を題材に事業プランを練ります。対象となった4物件は、前回発掘した魅力的なものの中から市役所の職員さんと参加者有志がヒアリングを重ね、オーナーさんのご協力が得られたもの。きちんとコミュニティの残る地域はやっぱりきちんと関係性が築かれていて強いですね。人づてでぐんぐんつながり、物件が集まりました。まずはお題となる物件視察へ…
チームには、公共Rメンバーとともに、谷尻さんやディレクターの馬場も加わり、前回リサーチした地域資源をうまく取り入れながら、どんな事業を起こしたら街に広がりのある事業ができるだろうか?自分たちはどんな街に住みたいだろうか?と、意見を出し合いながら事業アイディアを練りました。谷尻さんの思考プロセスを横で見られるなんてなんて幸せ!
夜は会場を変え、白熱する議論。このスナック街が三次の一番の宝なのでは!?と話題に。
霧の町、三次を体験
翌朝はこれまた三次の地域資源実習として、朝の6時から霧の海(雲海を見に行きました!
三次市には前述の通り川が多く流れ、ちょうど谷間になっていることから、春と秋には濃い霧が発生しやすく、霧の町とも言われています。ゆるキャラもきりこゃん。この日も素晴らしく美しい雲霧の海が見えました〜!幸先良し!
その後、眠い目をこすりながらチームごと最終発表にむけ、ラストスパート。人口5.8万人の三次市ですが、不動産オーナー、建築、メディア、不動産、商品開発、企画などなど多様なバックグランドを持ったメンバーが集まっており、参加者全員の知恵を合わせれば何でもできてしまいそう。
事業プラン発表会
第2回2日目の夕方から発表会を開催。物件を提供してくださったオーナーさんや地域の方もお招きしました。
チームAの提案:「カフェクラスメイト」
なんと、このワークショップをきっかけに元クラスメイトの二人が再会を果たし、実はお互いカフェをやりたいという夢を持っていたことが発覚。チーム全体が、ふたりの夢を実現する応援団としてプランを考えました。三次町にはゆっくり自分の時間を持ったり、集まれたりする場所が少ないことから、カフェに図書館やシェアオフィス、アトリエや子連れの方用のお座敷サロンまで多様な時間の過ごし方ができるスペースを提案しました。
チームB:「ワークリノベーション」
三次町にはワインや唐麵、ワニなど三次ならではの食を提供できる人や魅力的な資源がたくさんあるのに、それを発信できる場所がない。ということで、地域に開かれたゲストハウス、バー、ショップの複合施設を提案。ショップは三次町に残る古い建具をリフォームして付加価値をつけて販売するような、新しい業態を生み出し、若い人が街で働き続けられるような場も創造していきます。提案の肝は、この複合施設のコンシェルジュ役。チーム内の現役看護師さんが病院から街へ飛び出し、女将となって社会課題を解決していく…というなんとも心強い提案でした。
チームC:「344YATAI」
対象物件を詳しく調べたところ、店舗として使うにはかなりの投資が必要になりそうだということが発覚。そこで発想を転換し、広い土間があるのを利用して、ここを起点に街に飛び出していく屋台のベースにしようと考えました。空き店舗をひとつずつリノベーションして街を変えていくのには時間がかかります。が、せっかく道幅の広い美しい街並みがある三次町、そこにポップアップ屋台が出て行けば、事業者も気軽にチャレンジでき、最小限の投資で楽しい街並みを実現できるという提案。
チームD:「わかわか小路」
三次町には本通りに垂直に交差するかたちで「小路(しょうじ)」という無数の路地が走っています。その小路に、小さな鉢植えや職人さんの工房が隠れているなど、街を魅力的にするエッセンスとなっています。チームDの提案は、その小路をもう一本つくってしまおうという大胆なもの。対象物件は本通りに面した伝統的な町屋タイプで、ちょうど裏側の間口が、平成30年度建設が予定されている公共施設側(妖怪ミュージアムができるとか!?)に面していることから、町屋の東西に通じる土間を小路と見立て、オープンにして街の回遊性を高めるという案です。各部屋は、「若連(わかれん)」というこの通りの活性化に取り組む職人集団の中から、若手を「若若連(わかわかれん)」としてチームアップし、谷尻さんがコラボレーションして地域の技を感じられる空間とし、テナント貸しをしていきます。
全4チームの案が出揃ったところで、最後に登場したチームG!行政職員のみなさんも、なんと片隅で密かにワークしていたことが発覚。今後整備を検討している公有地の活用について、また街の回遊性の考え方についての課題を共有してくださいました。何よりも、一緒にこの場に身を置いて自らも考え、発表していた姿勢に、三次市役所の職員さんと市民の距離の近さを感じ、二人三脚でエリアリノベーションに取り組んでいけそうな予感がしました!
こうして、平成28年度、三次のエリアリノベーションはものすごい初速でスタートを切りました!驚いたのが、実際にここで企画した事業アイディアを実現させたいというチームが2チームも現れ、凄まじい展開になってしまったこと。これまで色々な思いを持ってまちに関わってきた方が、一同にそれを共有して、形にしてみる機会がきっとなかったんですね。公共R不動産としても初めてのエリアリノベーションの取り組みでしたが、そのようなきっかけづくりができたことをとても嬉しく思います。
来年度もこの火を絶やさず、息切れせぬよう、伴走していく予定です。広島県や三次市にゆかりのある方も、エリアリノベーションに興味を持たれたみなさんもぜひ、ご参加くださいね!
【追跡レポート】
やる!と宣言をした2チーム着々とプロジェクトを進めているという報告をいただきました。
344YATAIワークショップ
まちに繰り出す344YATAIのチームは、リーダー上野さんを中心に、ワークショップ終了直後から動き出し、年明けにはDIY屋台ワークショップを実施!メディアにも取り上げられ、別の町のマルシェから出店依頼もきているのだとか。
上野さんはもともとローカルラジオの仕事もしており、その広〜いネットワークを駆使してどんどん人を巻き込み超高速の実現につながりました。チームやその他ワークショップで知り合った仲間たちもSNSを駆使して忙しい中できることを貢献しあっており素晴らしいチームワークでした。可愛さとたくましさを兼ね備えた上野さん、今後の三次を引っ張っていく重要な一翼を担ってくれそうで楽しみです!
カフェ クラスメイト
こちらもワークショップ終了して早々、なんと物件を取得したとのご報告が!今は商工会議所と事業計画の詰め作業にはいっており、春には店舗設計に入るのだとか。公共R不動産も引き続きサポートを…なんて寝ぼけたことを言っている間に、事業着手しておりました。
まちづくりの概念をアップデートしたエリアリノベーションですが、その中心はいつも「人」であることは普遍的な事実のようです。三次市のポテンシャルは人にあり。まちの変化が今後、どう連鎖を生んでいくか、まだまだ三次市の挑戦は続きます!