ツアーとトークイベントの背景
岡山県瀬戸内市、「日本のエーゲ海」で知られる牛窓の海辺に佇む旧診療所。この診療所を再生するための「旧牛窓診療所リノベーションプロジェクト」では、平成29年8月末にサウンディング調査の一環として視察ツアー&トークイベントを行いました。
今回の調査では、大変理解のある瀬戸内市さんに協力していただき、瀬戸内市×公共R不動産で、地味に新しいかたちのサウンディングに挑戦しました。その様子をレポートします。
サウンディング調査とは、行政がある施設の活用をする際、民間の活用事業者を公募する前段階で、事業者の用途や諸条件についての感触を知り調整を行うためのプロセスのことを指します。通常のサウンディング調査は、ある施設の活用を希望する民間からの意見を募集するところから開始します。が、今回はそこに踏み出す前に、もうワンステップ、牛窓視察ツアーとトークイベントをセットするところからスタートしました。
(国交省『PPP/PFI 事業を促進するための官民間の対話・提案 事例集』より)
目的は2つ。
ひとつは、潜在活用者である民間事業者さんに、その建物だけでなくエリアを紹介し、さらに地元の方々とも出会うことで、エリア全体の地域資源やポテンシャルを感じてもらい、より地域に訴求力があり、地元の人に求められる活用事業を提案してほしいと考えたこと。
2つ目は、関心のある事業者さん同士も知り合う機会があるといいなと思ったからです。これは、実はかなりの挑戦です。だって、潜在活用者さんは、全員ゆくゆくコンペに手を挙げるかもしれないライバル同士なのですから!こんな段階で、誰か参加してくれるんだろうか?参加者同士のコミュニケーションが微妙になるのではないか。いや、こんな募集に手を上げてくれるひとたちですから、きっと価値観も似ている、柔軟な事業者さんたちのはず…などなど、公共R不動産チーム内でも様々な議論がありました。
それでも敢えてやってみたかったのは、今後、日本にこのようなスキームでの募集が必要になってくると思っているからです。
実はこの診療所、非常に大きなハコで、延床面積が3,000㎡以上もあり、もしかしたら1社じゃ使えないけど、複数社がはいったら使えるかも…と思っています。簡単にいうと、厨房を使いたいと思っている飲食店さんと、病室をゲストハウスにしたいと思っている事業者さんが、1社じゃ応募できないけど、ツアーにきてくれて、仲良くなって、一緒に応募できたらいいな、と思ったのです。
行政では、そもそも施設の活用を検討するにあたり、特定の民間企業に利益を誘導するような営業的な行為はやりにくく(個人的にはある程度やるべきだと思いますが)、そのため公募や入札という広く情報をオープンにして待つというプロセスを踏みます。しかし、そのプロセス一辺倒では、情報が届く先は限られており、また柔軟性にも乏しいことから、街の小さな事業者や個人のニーズをすくい上げることはできません。
その、通常は「公平性」と引き換えに可能性が限られてしまうサウンディングのプロセスを、公共R不動産という民間チームに任せてもらうことで、私たちがエージェントとなり、民間である立場を活かして、フットワーク軽く、いろいろな意見を聞きに行くことができると考えました。
民間に「公募要項作成」を発注する自治体さんは、これまでも多くいました。
しかし、私たちは「公募要項作成」を「請け負う」のではなく、本来の目的である「なるべく適切な状態で施設が活用されるよう、事業者をみつけること」を行政の「パートナーとして行う」という立場をとっています。
公共R不動産が、今回サウンディング調査を実験的にやらせてもらっている意義はそこにあると思っています。まあ、結果、そんなに簡単に物事は進まないわけですが…(笑)
次回は当日の模様をレポートします。
プロジェクト概要はこちらをご覧ください
サウンディングの募集記事はこちらをご覧ください
[開催レポート1] 旧牛窓診療所リノベーションプロジェクト・サウンディングツアー
[開催レポート2] 旧牛窓診療所リノベーションプロジェクト・サウンディングツアー
[開催レポート3] 旧牛窓診療所リノベーションプロジェクト・サウンディングツアー