「公共不動産データベース(公共DB)」とは、全国の遊休公有財産の情報を一元化を目指すサービス。面積や築年数など整理されたデータ項目と写真が大きく見やすいデザインで、全国の遊休公有財産情報を一気に検索することができます。
そんな公共DBの中から、公共R不動産メンバーがテーマに沿って気になる物件をセレクトするこのシリーズ。今回は趣向を変えて「民間会員のニーズと傾向」そして「公共DB活用の応用事例」という2部構成でお届けします。
・どのような業種が、どのような目的で公共不動産を探しているのか
・どのように登録すると民間企業のアンテナにひっかかりやすいのか
自治体のみなさまには、ぜひともこんな視点でご覧いただけたらと思います。
民間会員はどんな物件を求めている?
①教育、学習系
ドローン教室や外国語学習施設、進学塾が事業拡大のために廃校を使いたいという声が寄せられています。学校や廃校はそのまま教育の場として使えるイメージがあり、物件の供給量も多いので問い合わせやニーズが多いのかもしれません。
②社会福祉系
社会福祉法人やNPO法人などの登録も多いです。①と同じく廃校を求める声があり、実際に福祉関係の施設として廃校が活用される事例は全国にあります。狭義の社会福祉にとどまらず、自社の民間事業と福祉的なサービスを掛け合わせた複合事業を展開したいなどのニーズも見られます。
③観光、宿泊系
デベロッパーや宿泊付きのエンタメ系、観光系の事業者が事業用地を探しています。「廃校は建物の規模が大きすぎて扱いにくい」という声もあるので、テーマパーク跡地や少年自然の家なども観光や宿泊系のニーズに当てはまってくるかもしれません。
④新規事業の実証実験用地、インキュベーション系
大手機器メーカーやIT企業などの新規事業用地や実証実験用地のニーズもあります。民間の施設や土地ではまとまった広さのものが少なく、公共不動産にもリサーチの範囲を広げているようです。事業内容によってはアクセスも重要になってくるので、高速ICや空港からの距離を重視するケースもあります。
⑤交通系
マイクロモビリティ系の業者がポートの設置場所を探しているケース。中心市街地の小さな隙間用地でもニーズがある可能性があります。
以上の①〜⑤の業種を問わず自治体のみなさんにお伝えしたいのが「どんなニーズに引っかかるかわからないので、どんな物件でもひとまず掲載してほしい」ということ。自分たちでは思いもよらないところにキラリと光る価値があるかもしれません。
こんなふうに公共DBを使ってみよう!物件登録の応用事例
以降は「公共DB活用の応用事例」として、いま気になる物件をピックアップしていきます。
自治体のみなさまには写真の選び方、新しい公共DBの使い方など、それぞれ切り口を参考にしてもらえたら嬉しいです。
指定管理者募集にも公共DBをぜひご活用ください
愛夢里及び河浦海上コテージ(熊本県天草市)
https://db.realpublicestate.jp/estates/4925
これは新しい公共DBの使い方!2024年12月現在、天草市が3件の指定管理者募集を公共DBに掲載しています。本来は活用事業者募集(サウンディング、入札を含め)のプラットフォームとして存在する公共DBですが、指定管理者の募集まで掲載されるとは。天草市さんの柔軟な発想力、さすがです。公共不動産活用の活性化を目指す公共DBとしては、こうした積極的なアプローチは大歓迎であります。そして、しっかり映える写真を選んでいるのも、民間事業者のツボを押さえていてGOODです!
土地はこうやって載せるのもいいですね
大物公園隣接土地(兵庫県尼崎市)
https://db.realpublicestate.jp/estates/5321
解体予定の公園隣接土地の活用者の募集です。土地っていつも掲載の方法が悩ましいんですよね。更地や整備中の土地の場合だと、どうしても画像からは立地条件や魅力が伝わりづらい。そこで尼崎市はトップ画像にエリア全体の整備イメージ図を選びました。土地単体を告知するのではなく「リニューアルする公園の隣の土地であること」「公園と一体的な活用ができるポテンシャルを秘めていること」を訴求することで、活用風景をイメージするための補助線をひいてあげるというわけです。土地は妄想スケッチや構想図を掲載することで、活用者をグッと惹きつけることができるという掲載事例ですね。
今後ますます増えていく歴史的建造物
旧さがレトロ館(佐賀県佐賀市)
https://db.realpublicestate.jp/estates/5349
すごく目を引く物件ですよね。こうした歴史的な建物はそのまちやエリアにとってアイコン的な存在であり、できるだけ解体せずに利活用していきたいところ。民間事業者にとっても、ハードの魅力と事業内容を連動させて、集客につなげていけるポテンシャルを秘めています。今後こういった趣のある建物は民間からの移管によってどんどん増えていくはず。公共DBとしても、例えば「レトロ系」といったように物件カテゴリを新設することも検討中です。
全国にある公共不動産の活用事例も紹介しています!
公共R不動産では、公共不動産を活用したプロジェクトの背景、ビジネススキームやデザインなど、全国のあらゆる事例を取材しています。公共不動産活用事業の参考に、以下よりぜひご覧ください。
お宝物件を掘り出せ!「公共不動産ディぐるナイト」
おもしろ公共不動産をディぐって、掘り出し物件を見つける楽しさを共有するイベント「公共不動産ディぐるナイト」。公共R不動産がおすすめする物件をセレクトして、不動産愛好家(勝手にそう呼ばせていただきます)のみなさんをゲストにお呼びし、セレクトした物件に対して「こんなふうに使っちゃう?」と妄想を繰り広げてもらいました。
廃校や文化施設、少年自然の家など、全国にある遊休公共不動産の活用方法についてディスカッションしているので、ぜひご覧ください!
公共DBのローンチ(開始)以降、民間会員の新規登録が毎月70〜80件ほど継続的に増え続けています。2024年12月現在では会員数が3500を超えて、登録企業の傾向について解析できるほどの数になってきました。
こうした状況のもと、いま一度民間のニーズに応えていきたいと思っています。そのためには自治体のみなさんに民間会員のニーズを知ってもらい、それに応じた物件を掲載してもらうことが一番の近道のはず。というわけで、まずは登録が多い民間会員の業種と求める物件やその条件について整理してみました。