磨けば輝く原石、発見
沼津といえば海のイメージが強いですが、INN THE PARKは富士山の手前、駿河湾を望む愛鷹(あしたか)山の中腹にある愛鷹運動公園内の森の中に位置します。周囲に民家はほとんどなく、木々に囲まれた芝生広場が広がっています。
宿泊棟などの施設は、その芝生広場の北側に、広場を見下ろすように並んでいます。東端の駐車場に車を停め、本館の受付でチェックイン。当時は200名以上を収容していたダイニングホールは、日本離れしたスタイリッシュなサロンにリノベーションされ、アンティークなソファやテーブルが置かれ、天井は高く一面ガラス張りで、木漏れ日が差し込みます。サロンは、宿泊者の共有スペースとなっているほか、カフェとしても営業。
木造2階建ての宿泊棟4棟と大浴場へは外廊下でつながっており、宿泊棟の木の内装には元のテイストを活かしほとんど手を入れていません。元野営場には屋外ダイニングを設え、広場を囲む林には、ドームテント3 棟、吊テント5棟(オープン当初1棟から増設)が木々の間から覗かせます。
自分たちで運営しよう
このやんちゃな企画、ことの始まりは2015年11月、スタートして間もないウェブサイト「公共R不動産」に沼津市役所より少年自然の家の取材依頼のメールが届いたのがきっかけ。
高速道路を使えば東京から約1.5時間の立地にある、こんなに緑豊かで静かな場所は希少です。しかも、賃料は破格。せっかくだから自分たちで運営してみようかと、公共R不動産チームのミーティングで盛り上がり、2016年に沼津市の実施した公募型プロポーザル方式の運営事業者公募に応募、事業者に選定され、株式会社インザパークが誕生しました。
ポイントは柔軟な公民連携体制
少年自然の家は1973年に建てられ、教育委員会が直営してきました。しかし、建物の老朽化や近隣自治体の類似施設への顧客流出などから、市は施設の閉鎖を決定。これまで年間数千万円の赤字施設だったため、民間には低廉な価格で貸し付ける条件で、運営事業者を募集しました。
市が電気・給排水工事など建物を使える状態にするまでの改修工事を行い、民間に引き渡し、そこからの施設改修の初期投資はすべて民間(株式会社インザパークを設立)が負担しています。約3,000㎡と広大な施設であるため、初期投資だけでなくメンテナンスにも相当のコストがかかることが見込まれ、事業計画は難航。しかし、補助金は使わず、民間都市開発推進機構と地元の沼津信用金庫で組織する「ぬまづまちづくりファンド有限責任事業組合」から出資を受ける形で資金を調達し、沼津市とインザパーク社は基本協定を締結しました。
施設は沼津市が所有し、インザパーク社は施設とテントエリアの面積に対して、施設使用料を支払っています。施設以外の公園の管理は従来通り公園課が行なっていますが、この施設の価値は公園と一体利用できること。その点は沼津市も理解しており、年間180日以内であれば市に設置許可等を得て、移動式カフェを設置し新設したり、イベントを開催したり、比較的占有に近い形で公園を利用できます。
2019年5月11日-12日には、愛鷹運動公園/INN THE PARK で「YES GOOD MARKET」が開催されました。(撮影:鈴木裕矢)
柔軟な運用のポイントは、役所内の公民連携部署と公園課が協働し、できるだけ民間の要望に応えようと調整を図る体制と担当者のやる気。。宿泊や飲食だけにとどまらず、ウエディングやフェスなど、この森でできるアクティビティのポテンシャルはまだまだ引きだせそうです。
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
上記の記事については、公共R不動産が編集・執筆した書籍、
「公共R不動産のプロジェクトスタディ 公民連携のしくみとデザイン」でもご紹介しています。
他事例や妄想コラム・インタビューもございますので、ぜひご覧ください。