まちのオアシス
2016年4月にリニューアルオープンした南池袋公園。池袋駅からほど近い場所にあるこの公園には、年中通して青々と茂る芝生がアイコンになっており、天気のいい日はたくさんの人が訪れます。朝のオープンから昼頃までは通勤客が立ち寄り、昼過ぎから夕方までは家族連れがピクニック、夜になるとカップルや会社帰りの仲間がお酒を片手に語らっています。ビールやチキンなどを販売するカフェも連日多くの人で賑わっています。
地域課題を解決する公園改修
今では多くの人に利用されるこの公園も、リニューアル前は路上生活者の人たちが住みつき、治安はけっしてよくありませんでした。さらに区内の公園管理費が高くなっていたこと、池袋駅東口周辺に路上駐輪が多いことも、豊島区の抱える大きな課題でした。そこで公園の改修とこれらの地域課題を掛けあわせて解決できないかと、当時の公園緑地課が旗を振り、大規模なリニューアルに踏み切りました。公設民営をコンセプトにしたこの公園では、 園内にカフェを設置して賑わいを生むだけでなく、地下の土地を電力会社に貸して変電所を入れることで収益を担保し、さらに地下に大型駐輪場も整備したことで路上駐輪問題も解決しました。
民間の運営力・企画力を活かす
南池袋公園では園内に設置した便益施設にカフェを入れることで、その売り上げの一部を「地域還元費」として公園の維持管理に活かすという収益モデルを構築し、それに貢献できるカフェ事業者を公募しました。そこで採択されたのが、地元で有名なビストロ「RACINES(ラシーヌ)」などを営む会社グリップセカンドです。同社はカフェで美味しい食事やお酒を提供しながら、公園を快適に使ってもらうための情報提供なども行っています。
また、公園活用に関する検討の場として、豊島区、カフェ事業者、住民代表、学識経験者らでつくる「南池袋公園をよくする会」という任意団体を組織し、イベント開催などの相談を協議・決定しています。さらに、公園に隣接するグリーン大通りの賑わい創出を担う会社nest がまちに日常的な賑わいをもたらすためのマルシェやウェディング、野外シネマ等の企画をプロデュースし、公園に隣接するグリーン大通りと、南池袋公園を含めたエリア一帯での魅力アップに向けたプログラムを企画・実施しています。
そうした動きを着実に進めたことで、グリーン大通りは、より居心地がよく、かつイベントの開催もしやすくなるような形でハードの整備がスタートしています。様々な実験を経て、街の人にとって必要なものを一つづつ整備していく、とても効果的なプロセスです。
公共空間が居心地の良い空間になることによってエリアの価値が上がり、BIDのように周辺ビルオーナーや事業者からの出資を維持・価値向上に投資していくようなスキームに発展すれば、新たな公民連携のモデルになるでしょう。
※南池袋・グリーン大通りを一体で活用した年に一度のイベント”IKEBUKURO LIVING LOOP”、2019年10月18日(金)〜20日(日)に開催されるとのこと。100を超える店舗が集まり、エリアの価値を上げるための様々な実験が展開されていきます。お時間ある方はぜひ。
・日時:
2019年10月18日(金)16:30〜20:30
2019年10月19日(土)11:00〜20:00
2019年10月20日(日)11:00〜16:00
・メイン会場:池袋グリーン大通り、南池袋公園
・参加費:無料(ワークショップ等一部有料)
http://ikebukuropark.com/livingloop/
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上記の記事については、公共R不動産が編集・執筆した書籍、
「公共R不動産のプロジェクトスタディ 公民連携のしくみとデザイン」でもご紹介しています。
他事例や妄想コラム・インタビューもございますので、ぜひご覧ください。