NEXT PUBLIC AWARD
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NEXT PUBLIC AWARD公共R不動産のプロジェクトスタディ

神戸市 NATURE STUDIO | 水族館からブルワリーまで。外部からの集客と地元コミュニティを両立する廃校活用の複合施設

日本の公共空間活用における新たな可能性を発見するため、昨年第1回目が開催された「NEXT PUBLIC AWARD」。その受賞作品を巡るシリーズとして、今回はグランプリを受賞した神戸市の廃校活用プロジェクト「NATURE STUDIO」についてお届けします。

神戸市の廃校を活用した複合施設 NATURE STUDIOの外観

2022年夏、神戸市兵庫区湊山エリアに誕生した「NATURE STUDIO(ネイチャースタジオ)」。廃校をリノベーションしたコミュニティ型複合施設で、「自然と暮らしをつくる」をテーマに、水族館、クラフトビールのブルワリー、フードホール、ハーブショップ、学童や小規模保育などのコンテンツが集結しています。

この場所は、2015年に廃校となった神戸市立湊山小学校の跡地。2019年に跡地利用の事業者が公募され、地元企業の村上工務店を代表とする企業グループが選定されました。村上工務店が神戸市から土地を15年間(最長30年間)定借して、建物は買い取り、自己投資にて改修。全体の企画・運営は、村上工務店の代表が経営する有限会社リバーワークスが行っており、各テナントの活動を支援しています。

かつての湊山小学校の跡地。西側の校舎(写真左側)は耐震基準に満たず解体。北側の校舎と東側の体育館をリノベーションした。
改修後。回遊性を高めつつバリアフリーとするために、北側の校舎(NORTH)と東側の体育館(EAST)を渡り廊下で繋いだ。
NATURE STUDIOの配置図。

今回は公共R不動産プロデューサーの馬場正尊が現地を訪ね、NATURE STUDIOの運営を行う有限会社リバーワークスの稲葉滉星さんに施設をご案内いただきました。

水族館にクラフトビールのブルワリー、学童や保育園など、コンテンツの組み合わせが実にユニークなこの施設。村上工務店代表の村上豪英(たけひで)さん独自のビジネスセンスやまちへの想いがベースとなり、仲間たちが集まって組織がつくられ、企画が練られていったといいます。それぞれのコンテンツがどのように作用しているのか、どのような体制で施設全体が運営されているのか、NEXT PUBLIC AWARDでは紹介しきれなかった詳細について、じっくりとうかがいました。

公共R不動産のNEXT PUBLIC AWARDの受賞で記念撮影する、公共R不動産の馬場正尊とNATURE STUDIOの村上 豪英さんと稲葉 滉星さん
左から馬場正尊、村上 豪英さん、稲葉 滉星さん(2023年12月に実施したNEXT PUBLIC AWARDにて。撮影:千葉顕弥)

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まずは各コンテンツを巡りながら、施設の全体像を紹介していきます。NATURE STUDIOの探訪へ、さっそくまいりましょう!

末尾には馬場がナビゲーションする動画もあるので、合わせてご覧ください。

施設全体を見守る:ハーブショップ

正門から入ってまず見えてくるのが、ハーブショップ。お店に入るとふわっとさわやかなハーブの香りに包まれます。ここではハーブだけでなく、ちょっと珍しい品種の植物や全国から集めたこだわりのガーデニング用品なども販売しています。

こちらのショップは施設全体を運営しているリバーワークスによる直営で、園芸の専門スタッフが常駐しているのがポイント。ショップの機能に加えて、庭の植生や木々、室内の観葉植物まですべてのグリーンを管理しつつ、この施設全体の運営を司るフロントのような役割も担っています。

NATURE STUDIOの旗盤店として、施設全体を見守るハーブショップ。
剪定した植物の蒸留や、グリーンにまつわるワークショップも行っている。

旬のおいしさを届ける生産機能:クラフトビールのブルワリー

ハーブショップの隣にあるのが、クラフトビールの醸造所「open air(オープンエア)湊山醸造所」。こちらは元給食室を活用しています。
醸造責任者のBen Emrich(ベン・エムリック)さんは、クラフトビールのメッカ、アメリカ・オレゴン州ポートランド出身で、故郷に帰って醸造を学んできました。ここには大小2種類のビール醸造ラインがあり、毎週のように新しいビールが生まれていきます。open airのテーマは「日本の豊かな季節を感じられるクラフトビール」。六甲山系から流れ込む美味しい地下水をベースに、シーズンに合わせたホップやハーブを駆使したビールづくりが行われています。

給食室はブルワリーに。既存の設備が上手く活用されている。
左 ヘッドブルワーのベン・エムリックさん。日々、新しいビールづくりの実験が行われている。 右 次々と新作を生み出していくopen air。ネーミングやパッケージのデザインにも注目したい。

できたてのビールはこのブルワリーや施設内のフードホールで飲むことができるほか、神戸市内外の飲食店、そして全国にも配送されていきます。

「廃校になったエリアに人を呼び込むことは簡単ではありません。生産拠点を合体させることで、集客施設による収益だけでなく、生産やプロダクトからも収益を得られる体制をつくっていきたい」と稲葉さんは話します。また、クラフトビールがこの施設の広告塔のひとつとなり、この醸造所を目的に来るお客さんも多くいらっしゃるとのこと。

暮らしによりそう:エディブルガーデン

かつて校庭だった空間は、エディブルガーデン(食べられる・使えるといった有用植物の庭)になりました。庭のいたるところに果樹やハーブなどが植えられていて、収穫したり、食べられたりするのが特徴。施設内のハーブショップには蒸留できる装置があるので、この庭で摘んだ植物を使ってアロマを抽出するワークショップも実施されています。

そして庭にはニジマスの釣り体験ができるフィッシュポンド(釣り堀)もあり、釣った魚は施設内のキッチンで調理してもらい、食べることができます。ただ消費するだけではない、自然に寄り添った体験ができる庭です。

元校庭にはハーブや果樹など食べられる植物が植えられている。
ニジマスの釣り体験ができるフィッシュポンド。

大人も子どももくつろげる水族館

NATURE STUDIOといえば、水族館。中に入るとその本格的な設えに驚きます。職員室や理科室や図書室などの特別教室があった空間が、魚たちが優雅に泳ぐ異空間へと生まれ変わりました。

この「みなとやま水族館」では、熱帯魚から淡水魚、そしてアルダブラゾウガメやコツメカワウソ、フタユビナマケモノまでさまざまな生きものと出会えます。空間的な大きな特徴は、水槽が低いこと。大人がゆっくりと過ごせる空間で、子どもたちの目線でもじっくりと魚を観察することができます。床にはクッションが置いてあるので、座ってぼーっと水槽を眺めることができたり、靴を脱いであがるエリアでは足をのばして座ったり、子どもたちがゴロゴロと寝転んだりする姿もありました。一般的な巡回型の水族館ではなく、くつろぎ型の水族館なのです。

地域の人に日常的に遊びにきてほしいという想いが、価格設定にも現れています。一般料金が1200円のところ、年間パスポートは3000円。子育て中のお父さんやお母さん、地域の子どもたちが日常的に遊びに来たり、散歩コースとして毎日立ち寄るお年寄りの方もいるそうです。

ぼんやり水槽が光る神秘的な空間。水槽の位置が低く、座ってじっくりと魚を観察できる。
靴を脱いで上がるカーペット敷きの空間「海辺の教室」。座ってくつろぎながら魚を観察することができる。

水族館は村上工務店による運営で、専門の飼育員を社員として雇用しています。スタッフの方が水槽を掃除している様子が見られたり、スタッフとお客さんが会話していたりと、ほっと一息つける水族館です。

生産機能も持つフードホール

水族館の建物の2階に上がると、フードホールがあります。旧湊山小学校は特別教室棟の2階に体育館があるという独特のゾーニングで、体育館の大空間を大胆にフードホールへとコンバージョンしました。

天井が高いワンフロアに、カレー店、タコス店、スイーツ店、open airのタップカウンターなど複数の店舗が並んでいます。地域の人はもちろん、休日の昼時には、水族館に来た遠方のお客さんも含めて席がいっぱいになるとのこと。

ここには市内で複数の飲食店を営む地元企業のセントラルキッチンもあります。ここで食品加工や真空調理などの商品製造や在庫管理も行っていて、三宮など複数の飲食店へ食べ物を供給しています。ブルワリーと同様に、集客が難しい平日にも外貨を稼ぐ機能のひとつです。

元体育館は開放感のあるフードホールに。地元のエッジが効いた飲食店が並ぶ。
フードホールにはセントラルキッチンもある。「郷土の食材を通して、地域を元気にしたい!」というコンセプトの地域に根付いた企業、株式会社ワールド・ワンが入居している。

日常的に地域に寄り添う:学童・小規模保育・就労支援施設

ブルワリーとハーブショップの上には、学童保育、小規模保育、就労支援施設があります。ここはテナントとして入居しているフロアです。この学童や保育園に通う子どもたちは日常的に水族館に行けたり、エディブルガーデンで遊ぶことができるわけですから、なんとも豊かな教育環境。就労支援施設ではものづくりが行われていたり、この施設の清掃業務を請け負ったりしています。

就労支援施設「コネクトスクール」

多様なコンテンツから生まれるシナジー

施設全体をまわったところで、稲葉さんにプロジェクトの背景や事業の仕組みなどをうかがっていきます。ここからは馬場によるインタビューとしてお届けします。

施設をご案内いただいた稲葉滉星さん。稲葉さんは建築を学び、東遊園地の社会実験への参加をきっかけにリバーワークスに入社。建築設計のバックグラウンドを生かしながら企画や施設管理まで、横断的に運営を担当している。

馬場 ぐるっと一周をご案内いただきありがとうございます。施設全体を使っていろんな実験をしている様子が伝わってきました。一見バラバラの機能のように見えて、それぞれがコラボレーションしながらいろんな事業が成り立っている。ひとつでも欠けたら成り立たないという必然的な組み合わせ。これがこの施設の大きな特徴だなと改めて思います。

稲葉 そうですね。ハーブショップの店員が水族館の内装を手伝ったり、保育園に子どもを預けて水族館やフードホールで働くスタッフもいたり、施設内でいろんな繋がりが生まれています。

馬場 コンテンツだけでなく、働き方のシナジーも効いているんですね。

稲葉 最近もコラボレーションが生まれています。就労支援施設では、捨てられる予定だった布で ポーチをつくってNATURE STUDIO内で販売したり、イベントで使うワイングラスホルダーをつくってもらったりもしています。

馬場 同居しながらいろんな企画を一緒にやる仲間たちのようになっていて、そういった調整を稲葉さんが行っているんですね。

稲葉 そうですね。施設内の調整もそうですし、来場者のみなさんに対しても同様です。みんなここに来る目的がバラバラなので、しっかりと施設の説明をしたり、別のコンテンツと繋ぎ合わせることを意識しています。

上空から見たエディブルガーデンや施設外観。

経営でもシナジーを効かせる

馬場 改めてこのエリアや事業の背景を教えてください。

稲葉 ここは三ノ宮駅から車で約15分という立地なのですが、再建築不可の木造建築が密集するエリアで、少子高齢化や空き家の問題も懸念されています。一方で、山が近く、いつでも自然を感じられる豊かさもあるエリアです。

湊山小学校は2015年に廃校となり、2019年に跡地利活用事業の計画が始まりました。そして、村上工務店が代表企業となりプロポーザルに手をあげたという流れです。

馬場 どのようなモチベーションでこの事業に参画することになったのでしょう。

稲葉 元をたどると、弊社代表の村上(豪英)は、東日本大震災でのボランティアをきっかけに「まちに貢献していきたい」と思うようになり、2011年から「神戸モトマチ大学」という地域の勉強会を主催してきました。「学びを通して、神戸でがんばっている人同士をつなげよう」というプロジェクト活動なのですが、そこで知り合った人たちとのネットワークがこのプロジェクトでも礎になっています。

2015年からは三宮駅近くの東遊園地の社会実験や梅田の社会実験などを経験しながら公共空間の持つポテンシャルに可能性を感じるようになり、この事業につながっていきました。

この場所(湊山小学校跡地)は村上工務店が神戸市から土地を定借15年(最長30年)で借りて、建物は買い取って所有しています。公募の条件として、校舎は利用しても、取り壊しても、どちらでもOKでした。更地にして新築することもできたのですが、「地域のみなさんにとって思い入れのある校舎を生かすことが、新しくできる施設への愛着につながるのでは」といまのかたちとなりました。

馬場 なるほど、そんな背景があったんですね。そして、建物を買い取っているから、渡り廊下を新設したり水族館やブルワリーなど特殊な空間を設計したりと、これだけ自由につくれたという。しかもどれもが地域に根付いたコンテンツになっている。そういったことができるのは、地元の工務店が事業主となる強みですよね。

新設した渡り廊下と建物の間にあるテラス席。緑に囲まれた心地いい空間。
メインエントランスで待ち受けるのは、NATURE STUDIOのシンボルとも言える「フレームグリッド」。ティーハウス建築設計事務所の槻橋修氏が考案したもの。立方体を組み合わせた外観装飾に植物が絡み、外観も日々変化していく。

馬場 事業スキームについても教えてください。

稲葉 事業主体は村上工務店で、運営・管理(BM/PM)は有限会社リバーワークスが行っています。ハーブショップやブルワリー、学童、保育園、就労支援施設はテナントとして入居しているのですが、ハーブショップはリバーワークスが、ブルワリーは村上工務店が出資してできた新設の会社が営んでいます。みなとやま水族館は村上工務店の直営です。

馬場 ハーブショップとブルワリーはどのような関係性なのですか?

稲葉 リバーワークスは同じく村上が代表をつとめる会社で、ハーブショップを直営しながら施設全体の運営・管理をしています。村上工務店にハーブショップの家賃を払ってはいますが、施設の運営やガーデンの管理は村上工務店から受注しています。ハーブショップで売り上げを上げつつ管理運営費も入ってくるので、会社として単独して事業経営ができています。

ブルワリーを営む株式会社オープンエアも、村上工務店と飲食事業を行う地元企業が共同出資して生まれた会社です。

ハーブショップでは、敷地内で育成・採取し、蒸留・加工したオリジナルのハーブ商品を販売している。

馬場 資本関係もいろいろで、仲間で株を持ち合ったりしながら、全体としてここを運営しているということなんですね。

稲葉 そうですね。この施設はショールーム的な役割にもなっていて、村上工務店としてはPPP事業への参画のきっかけ、リバーワークスとしてはグリーン関係やランドスケープのプロジェクトなど、本業にもつながっています。

馬場 そのシナジーのつくり方がすごく奥深いですね。リバーワークス、村上工務店、オープンエアの3社がうまくバランスを取りながらこの場所が成り立っている。3社の代表はすべて村上さん。この空間と経営のスタイルは村上さん独自のセンスによるものかもしれませんね。

神戸市の廃校を活用した複合施設、NATURE STUDIOの事業運営スキーム
NATURE STUDIOの運営スキーム

愛着の持てる場所をつくりたい

馬場 稲葉さんの役割として、施設内のコンテンツやお客さんなど、あらゆるものを繋いでいるとのことですが、具体的にもう少し聞かせてください。

稲葉 主にはイベントを企画したり、工事の発注をしたり、テナントさんとミーティングしてうまくみんなが連携できるように常にコラボレーションの可能性を考えています。施設内だけでなく、地域や企業など外との連携も含めて模索しています。

例えば週末には町内会の防災訓練をやったり、NATURE STUDIOを経由する路線バスのブランディングもやっています。外に出て、こちらから提案しに行くことも多いですね。

馬場 そんな仕事にも繋がっているんですね!リバーワークスとはいったいどんな会社なのですか?

稲葉 大きな概念でいうとプレイスメイキングをやる会社です。NATURE STUDIOといった場所の運営から、植物の管理、ガーデンのプランニング、設計まで手法はいろいろですが、根底にあるのは「愛着の持てる場所や地域、まちをつくりたい」ということです。

地域の人が主催かのように仕切ってくださる、という新春もちつき大会。
施設内にある農園「Nature Farm」。野菜の種まきから収穫まで、そして収穫後はサラダにして食べる一連の活動をワークショップなどを通じて体験できる。

馬場 リバーワークスは、NATURE STUDIOを運営するためにつくられた会社なのですか?

稲葉 元々は新規事業をするために村上が立ち上げた会社なのですが、「まちのためになにができるか」といろんな事業を試すなかで、2015年に東遊園地の社会実験が始まり、そこから徐々にプレイスメイキングの方向に変わっていきました。

少しづつ人数が増えていって、いまではアルバイトのスタッフを除くと植物担当が2名、プレイスメイキングや設計ができる人が4名、システムエンジニアが1名、そして村上という構成です。

馬場 多種多様な人材で構成されているんですね。

「外貨を稼ぐこと」と「地域のインフラ機能」の両立

馬場 オープンして2年ほどですね。日々の現場はどのような感じですか?

稲葉 毎日いろんなとこからお客様が来てくださっています。メディアに取り上げていただいたので、県外や四国から来てくださる方もいて。一度は廃校になった場所に外から人が来てもらえるようになったのは驚きですし、それはやはり水族館というコンテンツの力が大きいのだと思います。

一方で地域のみなさんは、元校舎の建物が残っているからか、小学校が続いてるようなニュアンスでとらえてくださっています。 イベントを開催すると地域の人も来てくれたり、年間パスポートで水族館に来てくださったり。外から人を呼ぶことと地域に根付くことがパキッと分かれてしまうのではなく、あえて曖昧にうまくやれている感覚があります。

馬場 確かに保育園や就労支援施設とか飲食だったり、日常に溶け込んでいる機能もあるし、今日は平日だからか水族館でも子どもがゴロゴロしたりしていて、まるで公園のようないい雰囲気でしたよね。

みなとやま水族館の人気者、コツメカワウソ。

馬場 週末はけっこう混み合う感じですか?

稲葉 そうですね。列ができてしまうこともあります。そうなるとやっぱり地域の人は来づらくなりますが、逆に平日に来てくれることでピークオフしている感じです。

馬場 そうか。廃校再生というとどうしても地域主体になりがちだけど、水族館みたいなぶっ飛んだコンテンツがあることで、両張りできる。そのあたりを直感的に感じているところが村上さんの天才的なセンスなんですね。

稲葉 村上も僕たちも「外貨を稼ぐこと」を意識しています。外から人に来ていただくことと、外に商品を移出すること。フードホールにセントラルキッチンがあるのもそのためです。三宮に食べ物を運ぶためのファクトリーであり倉庫としながら、この場所ではできたてのおいしさを訪れたお客さんに楽しんでもらうこともできます。

馬場 なるほど。よくできた仕組みですね!

稲葉 ここは車があれば三宮へもすごく近いので、距離感がちょうどいいエリアなんです。

馬場 ハーブショップや水族館、学童やフードホールとか、一見バラバラじゃないですか。だけど、ひとつずつ紐解いてみれば全部必然性や納得感がある感じ。水族館や飲食店では集客機能、ブルワリーやセントラルキッチンでは生産機能、学童や保育園では地域のインフラ的機能という感じで、いくつもの目的や切り口からコンテンツが構成されているんですね。

NATURE STUDIO内にはopen airのタップルームもある。醸造所のすぐ近くでビールが飲めるという特別な環境!

周辺の住宅エリアの課題解決へ

馬場 今後NATURE STUDIOは、そしてリバーワークスはどんな進化をしていく可能性があるのでしょうか。

稲葉 NATURE STUDIOは、今年の秋から新築棟を建てて、ヘルスケアやレストランなど、地域の方々がより日常的に訪れる拠点にしようと思っています。

馬場 ますますコンテンツが充実していきますね。

稲葉 ほかには、新しいコラボレーションをどんどん生み出していきたいと思います。たとえば、ブルワリーから出る麦芽のカスをリバーワークス(ハーブショップ)で引き受けて、それを肥料にして施設の植物を育てたり、肥料自体を販売していく。そして肥料づくりの作業を就労支援施設のみなさんにサポートしていただいたり。これは一例ですが、環境的な循環を意識しつつ、施設内の連携を増やしていきたいと思います。

あとは、地域の人たちにもっとこの場所を普段使いしてもらえるような企画や施策を考えたいですし、地域全体に来街者が増えるような町歩き企画や公共交通機関の利用促進などにも取り組みたいです。このエリアに住む人が増えていくことにも寄与できたらいいなと思います。

馬場 そうか。もはや何の会社か定義ができないですね。

NATURE STUDIOから望む周辺エリア。平清盛ゆかりの地でもある、歴史が深い山際の住宅地。

稲葉 ここは木造密集市街地という防災面で課題があるエリアでもあるので、スクラップ&ビルドではない解決策を見出すべく、空地空家などの周辺調査も行っていきます。プロポーザルに一緒に参加してくださった、ティーハウス建築設計事務所を主宰する神戸大学准教授の槻橋修先生にもご協力いただきながら取り組んでいく予定です。

馬場 神戸大学のアカデミズムともしっかり連携しているというわけですね。そして、神戸市との連携もあるし、いろんな展開の仕方があるんだな。

稲葉 実は神戸R不動産チームもこのエリアを開拓してくださっているようです。

馬場 そうなんですね。ちょっと穴場感があっていい雰囲気がありますよね。

稲葉 いろんな組織や団体でうまく連携して、まち全体が良くなってくといいなと思います。

馬場正尊の建築探訪 NATURE STUDIO

馬場がNATURE STUDIOを訪れ、施設をナビゲーションする動画もあわせてどうぞ!

NATURE STUDIO
兵庫県神戸市兵庫区雪御所町2−18
https://naturestudio.jp/

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