アメリカ、カリフォルニア。美しい湾岸線を臨むアラメダ・エリアに海軍基地の跡地を利用した蒸留所があるのをご存知だろうか。
蒸留所の名は「St.george spirits」サッカーのピッチ6個分もの広大な敷地内には、まるで前衛芸術のオブジェのような巨大なポットスチル(蒸留器)や、所狭しと積み立てられた樽が並べられており、蒸留所というよりも、どこかギャラリーやアトリエのような印象を受ける。
そんな創造的なロケーションで酒造りをしているだけあって、30年以上も前(この蒸留所には2004年に移転してきた)から焼酎の製造に挑んだり、現在でも麹の研究をしていたりと、より革新的な酒造りをするのに余念が無い。さらに、通常であれば蒸留所というと単一の酒のみ(例えばウィスキーなど)を製造しているのに対して、St.george spiritsではジン・ブランディー・ラム・ウォッカ・シングルモルトウィスキー・バーボンウィスキー・各種リキュールなどなど、その種類の豊富さにも驚かされる。
また、その広大な敷地を利用して、地域住民を呼び大規模な試飲イベントを開いたり、様々な企業とタッグを組みパーティーイベントを企画したり、アーティストの展覧会を催したりと、単に蒸留所としての機能を備えるだけでなく、様々な人々を巻き込み、その枠にはまらない創造的な取り組みを行っている。
海外ではこういったダイナミズムをもった公共施設のリノベーションが盛んにおこなわれている。海外でできるのなら日本でだってやろうと思えばできるはずである。そこには様々な障壁が存在するが、気概のある民間と古い概念にとらわれないフレキシブルな行政がタッグを組み課題を解決していくことで、きっとそれは乗り越えられるのではないだろうか。