パブリックスペースの実験としてのトライアルコンペ開催
2023年9月、UR都市機構(以下、UR)は北区・赤羽に「URまちとくらしのミュージアム」を開館しました。公共不動産プロデューサーの馬場正尊が、このミュージアムの施設PRプロデューサーを務めています。
「過去・現在・未来 私たちの暮らし方を探求する情報発信施設」として、1955年設立の日本住宅公団以来、都市再生/震災復興/ニュータウン整備などを通じて探究してきた新たな暮らし方を一望できるミュージアム棟に加え、スターハウスなどの保存住棟4棟(国の登録有形文化財)、屋外のワークショップひろばから構成されるこのミュージアム。
ミュージアム棟では,関東大震災後の住宅復興でつくられた同潤会代官山アパートメントをはじめ、4団地計6戸の復元住戸や、集合住宅やUR関連のアーカイブが展示されるなど見どころがたくさん。建築・団地マニアには垂涎ものです。
これからの未来はパブリックスペースに
このミュージアムがユニークなのは、ミュージアム棟だけではなく、保存住棟や、さらに屋外空間であるワークショップひろばを含めて「ミュージアム」と呼んでいるところです。展示では、歴史を横断的に把握するダイナミズムを楽しみつつ、「未来」の可能性をいちばん秘めているのは、もしかすると住棟間のパブリックスペース(ワークショップひろば)なのかもしれない。ここを「どう使うか」という視点でさまざまな人に実験的に関わっていただくことそのものが、ミュージアムの新たな風景をつくっていくのではないか。
そんな思いから、ミュージアムのパブリックスペース(ワークショップひろば)を実験場に、新たな風景をつくり出す活動、デザイン、ビジネスのアイデアを募集する「URまちとくらしのミュージアム開館記念 まちとくらしのトライアルコンペ」が開催。現在、エントリー受付中です!
小さなイベントから仮設のデザイン、ビジネスのアイデアまで
企画イメージとして想定されているのは、以下のようなもの。
・コミュニティデザイン:地域住民・団地住民のためのサービス・ビジネス・イベント等の提案
・スペースデザイン:ミュージアムの屋外空間を使いこなす家具やツール、仕組みの提案
・ミュージアムPRデザイン:ミュージアムの周知や活用に貢献するイベントやグッズ等の提案
小さなイベントから仮設のデザイン、将来的に事業化が可能なアイデアまで、ミュージアム敷地を実験場に、自由に提案可能です。
また今回のコンペは実現を前提としているのも特徴です。
受賞企画は、2024年度中のトライアル実施に向けて調整を進め、将来にわたり赤羽の新たな風景となっていくことを目指します(賞金とは別途のサポートを想定しています)。
パブリックスペースの使い方の実験をしよう!
今回審査員長を務める馬場は、このコンペの意図を以下のように語ります。
馬場 「このコンペでは、団地に囲まれたミュージアムの緑豊かなパブリックスペースを中心に、活動やデザイン、ビジネスのアイデアと、それを展開するプレイヤーを募集しています。面白い案があればURがサポートして、都市や団地にインストールしていきたいとも考えています。
地元の若者が「この広場でこんなことしたい!」って素直に持ち込んでくれるのも嬉しいし、たとえば企業が団地のパブリックスペースをプラットフォームとして使う実証実験してみたい、とハイブロウな案を出してきてくれても面白い。そういういろんな方向性が共存してくるといいな、と妄想しています。
面白そうなアイデアはどんどん僕たち審査員で拾って、膨らませて盛り上げていきたい。そういう意味では、今回、審査員の皆さん全員が、企画やデザインの知見もありながら、実際の運営、マネジメントにもリアリティを持って見られる人たちが揃っていて、かつ、主催者であるUR都市機構の副理事長も入っていただき、「実現する」ということをかなり見据えた布陣になっています。
団地のオープンスペースは、人が住んでいる公園のような可能性溢れるフィールドだと思っています。そこを使って新しいアクティビティを市民ベースで仕掛けていくきっかけとなるようなコンペになると嬉しいです。」
URが場所を使いたい人を広く募集し、使うアイデアをもつ人とコミュニケーションをとりながらトライアルしていく。そのアイデアが将来的にはこの場所(または別の団地などに)インストールされる可能性もあるかもしれない。そんなプロセスは、公共R不動産が提案する「トライアル・サウンディング」のイメージにも近いかもしれません。
企画/デザイン/運営まで、知見豊富な審査員陣
今回コンペの審査員を務めるのは以下の5名の方々。企画やデザインはもちろん、実際の運営、マネジメントにもリアリティのある知見を持つ方々にお声がけをしました。
馬場正尊(OpenA/東北芸術工科大学教授)
荒昌史(HITOTOWA INC. )
内田 友紀(リ・パブリック/YET)
織戸龍也(株式会社岩淵家守舎)
田中伸和(UR都市機構 副理事長)
荒さん、内田さん、織戸さんより、メッセージをいただいたのでご紹介します。
荒昌史さん(HITOTOWA INC.代表取締役)
Hintmationという赤羽台団地のコミュニティ拠点(2024年春オープン)の立ち上げに関わっていますが、私自身の幼児期に、赤羽台の「あかいとり幼稚園」に通っていたのがこの地域との原点です。子どもたちにとって、団地は自由に駆け回る遊び場であり、知らない大人に叱られたりする場所でもありました。今思うと、緩やかに見守る人間関係があったのだと思います。そういう原風景を現代的な形で再創造できたなら、未来のまちとくらしにつながるのではないでしょうか。
内田友紀さん(都市デザイナー/株式会社リ・パブリック/YET代表)
このコンペは、まちに暮らすそれぞれの立場から──たとえばそこに暮らす小学生として、都市を楽しむ大人として、子育てをする当事者として──実現してみたい風景を思い切り描けるチャンスです。自分の半径数メートルの距離感から、理想とする都市の風景を描いてみてほしいです。
織戸龍也さん(株式会社岩淵家守舎代表取締役)
ヌーヴェル赤羽台は建て替えも進み、洗練されたエリアになろうとしていますが、外向きの顔ではない「日常の風景」をいかにつくるかが肝心になると思います。あまり壮大に構えずに、「毎日そこにあったら楽しいこと」を考え、提案してほしいです。楽しい日常をつくる仕掛けの提案をお待ちしています。
応募締め切りは2024年1月19日(金)。
赤羽にお住まいで、地元で何かやってみたいことがある方、すでに別の場所でトライしている企画を新たな形で展開してみたい方、団地愛を炸裂させたい方、などなど……、あなたがこの場所でやってみたいこと、ぜひ気軽にご応募ください!
【まちとくらしのトライアルコンペ 応募概要】
主催:独立行政法人都市再生機構
後援:東京都北区
内容:「URまちとくらしのミュージアム」の屋外空間を対象に、新たな風景をつくり出す活動、デザイン、ビジネスなどのアイデアを募集
資格:個人、グループ、企業、団体いずれも応募可 国籍、年齢、資格等も問いません。内容に重複がなければ、複数応募も可とします。ただし、最終審査で1名以上が公開プレゼンテーションに出席できることを条件とします。
スケジュール・応募方法:
● エントリー期間
2023年11月5日(日)〜2024年1月19日(金)
※エントリーいただいた方には、応募受付の開始や審査員からのメッセージなど、コンペに関する情報を事務局からご案内いたします。
● 質問受付期間
2023年11月5日(日)〜12月5日(火)
● 応募期間・締切
2023年12月19日(火)〜2024年1月19日(金)
提出締切:2024年1月19日(金)18:00
● 二次審査および結果発表
2024年3月16日(土)
● 2024年度にミュージアム敷地にて実施予定
提出物・形式:
①企画提案資料
A3サイズ(297×420mm)/片面横使い1枚(PDF形式)
②エントリーシート
応募者(団体)の基礎情報を記入
エントリーや応募資料の詳細はコンペ公式ウェブサイトをご覧ください
https://akabanemuseum.ur-net.go.jp/special/trial_competition/