経歴を教えてください
矢ヶ部 慎一(やかべ・しんいち)
- 1976年生まれ。文学部出身の再開発コンサルを経由して公民連携分野が現在地です。
- 株式会社タカハ都市科学研究所にて、法定再開発の事業コーディネート等に従事(1998年4月〜2021年4月)。
- 2015年3月東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻修士課程を修了後、公民連携分野へ展開中。
- PPPリサーチパートナー/公共R不動産/アフタヌーンソサエティ/埼玉県小川町のNPO法人会員/など。
公共R不動産のプロジェクトで特に印象深いものは?
公共R不動産と関わり方が深くなってからはまだ日が浅いので、いま関わっているプロジェクト、『公共不動産リサーチプロジェクト』が最も印象深いです。公共R不動産が運営する、全国の遊休化した公共不動産情報と民間事業者をつなぐ情報プラットフォーム『公共不動産データベース』が、国土交通省の『ランドバンクの活用等による土地の適切な利用・管理の推進に向けた先進事例構築モデル調査』に2021年6月採択されました。
この調査の一環で、登録データの収集・整理・分析をしたり、不動産関係者や民間プレーヤ、自治体職員へのインタビューをしたり、全国の都道府県・市町村へのアンケートを取ったり等々しているのですが、久しぶりに初心に返って色々やってます。
感覚的あるいは論理的に分かっていた事かもしれないけれど、実際にやってみてデータを取って、そのデータをあらためて整理してみたところからがスタート。「やっぱりそうだったね」「思ったほどではなかったね」「これは意外」という、仮説と検証の繰り返しの中から次の進め方を打ち出していくのが大事ですよね。
そもそもこの『公共不動産データベース』というサービスそのものが、実際にやって行く中で軌道修正を積み重ねていく、壮大な社会実験のようなところもあります。これから今年度のまとめに入り、次年度以降取り組むべきテーマを検討しているところです。そういう現在進行形で印象的なプロジェクトです。
あなたが考える公共R不動産らしさ、特徴とは?
「それいいね!」を見つける広さや反応するスピードが圧倒的なところや、難しくなりがちなテーマでも意地でも小難しく見えるアウトプットをしないところは、自分がその良さを消さないように気をつけなきゃと思ってます。
また、自分は約2年間、本業の再開発コンサルタントをしながらの兼業スタイルで関わっていました。時間配分は大変と言えば大変でしたが、本業との相性がよければきっと大丈夫です。
公共R不動産をやる中で、どんなことにやりがいを感じますか?
「これはけっこう未来をつくる一投になるのでは?」「ひょっとすると今後、海外の参考になるテーマだったりするのでは?」と感じたときは、「おぉ、公共Rをやっててよかったな」と思います。公共不動産の活用事例が多くなってきたとはいえ、やり方はまだまだひとつずつのオーダーメイド。正直なところ、民間不動産に比べて動きは重くてすぐに結果が見えにくかったり、ひとつひとつのことは地味だったり面倒なことも多かったりします。
とはいえ、これで進め方が小慣れてカタにハマってきたら、逆に工夫の余地が少なくなって、面白味が減ったと思ってしまうかもしれません。これからまだまだ、公共不動産の再活用を通じて都市経営課題を解決するやり方、可能性があるように思えます。この段階の試行錯誤が面白くもありやりがいもあり、またこの試行錯誤がのちのち似たような課題を抱える地域にきっと役立つと信じています。
公共R不動産でこれからチャレンジしていきたいことは?
『公共不動産データベース』というプラットフォームを単に運用して充実させていくというより、これを活用して、もっとローカライズするとか、もっとプロジェクト組成のフォロー体制を充実させたりとか、プラットフォームがあることの先へ行ってみたい気はします。まだまだ足元も固まってはいないんですけど(苦笑)。
公共不動産の再活用は、単なる賃貸や譲渡にとどまらず、公民連携プロジェクトとして立ち上がります。周知のとおり社会背景も地域課題も変化する中で、その解決には従来の延長線上にはない視点や手法が必要です。これまで関わりがなかった分野や新たな民間プレーヤーと出会い、行政と民間がパートナーとして共同でプロジェクトを進める関係性をつくることが「鍵」になります。
しかし、行政と民間それぞれの行動原理は異なります。何に関心があって、何に価値を見出していて、どういった課題を解決したくて、誰がどのくらいのスピード感で動いて、何をどこまで負担しながら、それぞれが得たいリターンをどのように得るか。こうした条件整理をしたり、協議を進めたり、契約に落とし込んだりする手間は、どうしても多くなるところではあります。こうした手間の中には、本質的な部分、価値の創造にはまったく関わりがないという点でムダなものも多くあります。
行政も民間も限られたリソース。これをできるだけ本質的なことに注ぎ込めるよう、情報収集・情報発信の面でさらに力になれればと思いますし、仕組みで解決できることについても取り組んで行ければと思います。自分にとってそのツールは現時点で『公共不動産データベース』であり、先に進むためにも、できればプラットフォームそのものが自走可能になるように、多くの皆さんの協力を得たいところです。
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