公共空間のトリセツ第一弾は公園。楽しく使いたいパブリックスペースNo.1でありながら、現状は禁止事項だらけ。
そんな公園の活用を可能にするには、どんな方法があるんだろう?
たとえば、公園の片隅にカフェがあったら。
自販機で買った缶コーヒーで一服、も悪くないけど、わざわざお茶しに行きたくなるようなカフェがあれば、公園の風景はがらっと変わるかもしれない。
自動販売機もカフェも、コーヒーを売るという営業行為をしている点では同じはずだけど、カフェを作るのは難しそう……
公園のトリセツでは、公園にカフェをつくるためのキーワードを、3つの事例(上野公園、南池袋公園、弘前市吉野町緑地)の活用スキームとともに紹介していきます。
まずは、今回ご紹介するキーワードから。
【事例から学ぶ】上野公園のスターバックスコーヒー
上野公園恩賜公園(以下、上野公園)には、スターバックスコーヒー(以下、スタバ)がありますよね。あれはどのようにできたのでしょう?
上野公園は東京都建設局の出先機関である、「東京都東部公園緑地事務所」が直接管理しています。都が直接管理する、「直営公園」にスタバができた仕組みとは…?
(事例の詳細は活用中記事をご参照ください:上野公園の緑を堪能)
【運営に至るまでのプロセス】
松田:公園にカフェといえば、上野公園のスタバが有名だけど、どんなプロセスを経てオープンしたんだろうね?
加藤:ポイントは、基本計画の策定段階で 「オープンカフェを園内につくる」ことを明示したことのようです。
松田:基本計画って?
加藤:公園の大きな方向性を定めたものですね。正式名称は、「上野恩賜公園再生基本計画」(以下、基本計画)。上野公園を文化的で魅力的な場所にしようということで、2009年に東京都建設局により作られました。スタバがオープンしたのが2012年なので、その3年前には、あの場所にオープンカフェを作ろう、ということが決まっていたわけです。
【裏付けとなる制度】
松田:最初の方で決めることが大事なんだね。 でも、なんで基本計画なんて大袈裟なものが必要なの?
加藤:そもそも都立公園に関する決まりごとは、東京都の条例で定められているのですが、原則営業行為が禁止されているんです。都の条例を見ると、禁止行為として「物品販売、業としての撮影その他営業行為をすること」がしっかりと書かれています(※)。
松田:えーっ!じゃあそもそも公園にカフェってつくれないってこと?!
加藤:いやいや、落ち着いて。下の図の16条「ただし」以降を読んでみてください。
松田:ただし……あらかじめ知事の許可を受けた場合は、この限りではない。
加藤:実は知事の許可があればOKなんです。上野公園の事例では、公園の基本計画策定段階で東京都建設局が知事から許可を得ることで、カフェの設置が可能になったんですよ。
松田:なるほど!
加藤:ちなみに、この「ただし」以降の部分のことを、一般的に「ただし書き」と呼びます。前の文の条件や例外を示した部分なので、法律や条例を読むときは要チェックですよ。
【事業の体制】
松田:カフェをつくることが出来た流れは何となくわかった! でも建物は誰のもの?
加藤:建物は東京都が建設、所有していて、管理を公益財団法人東京都公園協会(以下、公園協会)に委託しています。その管理委託の中で、公園協会が運営者を公募、15社の応募の中からスタバが選ばれたわけです。
そして、ここにポイントがもうひとつ! 基本計画に事前に定めたことで開業が可能になったスタバですが、その運営方法にも特徴があります。スタバは収益のうち数パーセントを、公園協会に支払い、受け取った公園協会はそのお金を、緑化事業など公園の整備のために充てているんです。
松田:公園で楽しく飲んだコーヒー代の一部で、公園がよりよくなるのか。使う人も管理する人も嬉しい仕組み!上野公園の場合は都立公園だから都知事の許可が必要だったけど、場所によっては市長や区長の許可でできるということよね?自治体のトップの皆さんいかがですか!って働きかけたいね。
加藤:基本計画の策定フェーズにある公園では、ぜひ方針に盛り込むことを検討してみてほしいですよね。
【まとめ】
上野公園では、「基本計画」と呼ばれる上位計画で位置づけたことによりカフェの設置が可能になりました。そして、カフェの収益が公園の管理費に還元される仕組みを採用することで、あの風景を持続させています。
※飲食店舗は、「公園施設」と捉えることも可能で、その場合は知事の許可なく、公園の利用に必要なもの、として設置することが出来ます。詳しくは「公園マスターに聞け!中編」をご確認ください。