市民が公共空間に対して思いを伝えられることって、残念ながらクレーム以外にはあまりないもの。結果、禁止事項ばかりの公園になってしまっているのかもしれません。より気軽に、よりポジティブに、行政にサイレントマジョリティになりがちな市民のニーズを伝え、生産的な議論のきっかけをつくりたい。そんな想いから公共R不動産が企画したアイディアコンペ。昨年5月の流山に引き続き、12月には静岡県沼津市がホストとなり開催してくれました!今回はその日の模様をレポートします。
※実施概要はこちら
狩野川周辺の公共空間の集積
沼津市では平成28年度から、少年自然の家の民間活用を図ったり、廃小学校をサイクリング拠点として活用したりと、公共空間活用に本腰を入れ始めています。そんな中、今回ターゲットになったのは狩野川階段堤。
これまで沼津の街はどのビルも狩野川に背を向けてつくられてきました。駅から徒歩5分、まちのど真ん中をこんなに雄大な川が流れているにもかかわらず、全くといっていいほど川の気配を感じない街なのです。それには、この狩野川が、暴れ川として人々を苦しめてきた歴史がありました。雨が降れば増水し田畑が流される。昭和33年の狩野川台風は千人以上名もの死者を出す大災害となりました。
狩野川階段堤
平成に入ってそんな狩野川の護岸整備が始まり、増水時の安全を守るだけでなく市民の憩いの場としてステージと椅子のような階段状の整備が進められました。しかし、街に染み付いた人々の動線というのはそう簡単に変わらないようで、休日のイベントは多く開催されるものの、平日はほぼガラガラ。京都の鴨川のように、人々の日常を潤すことを目的として作られたのに、いまいち使われず勿体ない状況が続いています。
もう一つの課題が中央公園。沼津城の城跡にある公園ですが、ロケーションが素晴らしいのです!駅前大通りを5分程ほどほど歩くと、ちょうど川への入口にあたる場
中央公園
…が、その素敵配置とは裏腹に、土日は個別にイベントの開催はあるものの、公園、川、橋とその先の公園がバラバラに使われていて一体利用がされていないのが現状です。
そこで、今回はこの公共空間の集積を一体的につかって、もっと市民のやりたいことを実現できるような使い方を提案してもらうアイディアコンペを行いました。
対象エリアマップ
フィールドワーク
まずは公共R不動産ディレクター馬場のインスピレーショントーク。リノベーションの概念から始まり、これまで手掛けてきた空間や海外で見てきた事例など、アイディアの源泉になりそうなネタをご紹介しました。
馬場のインスパイアリングートーク
今回のワークショップ参加者は総勢24名。ほとんどが沼津市民の方で、子連れの主婦の方から公共施設や空間に携わる方まで、バックグラウンドは様々でした。みなさんの妄想エンジンがかかったところで、3チームに分かれ、まずは対象エリアとなる広大な公共空間を歩いてみました。さっそく川辺でランチをしてみるチームも。実際座ってみると、話しにくい高さだね、とか、花壇が逆に空間を隔ててしまっているとか、課題も具体的に見えてきたようです。
中央公園ではランニングステーションにも立ち寄り、実際の利用状況などをヒアリング。トイレやシャワー完備とのことですが、外からみるとやや立ち寄りにくいクローズドな雰囲気がありました。堤防の上をぐるりと港まで走れるコースも整備されており、とっても気持ち良さそうなのになんだか勿体ない。中央公園からあゆみ橋を渡り、香貫公園へ。ここは神社に隣接し、木が多いためか落ち着いたイメージですが、公園というよりも単なる通り道としてしか認識されていないかも…。
狩野川階段堤をフィールドワーク中。この植栽帯とフェンスが分断を生んでいるかもしれないなぁ…、
街歩き後、各チームに公共Rメンバーも加わり集中してアイディアプランを練っていきます。いかんせん、広大な公共空間なので全部を一つにまとめるのにどのチームも苦戦していた模様。途中、市長もふらりとワークショップ会場に現れ、檄を飛ばしていってくださいました。さてどんなアイディアが飛び出したのでしょうか?
開催レポート・後編では提案内容とコンペの結果、その後の動きについて詳しくお伝えします!