ヨコハマ式公共空間の活用促進プロジェクト
ヨコハマ式公共空間の活用促進プロジェクト

ヨコハマ式公共空間の活用促進とは? 共創オープンフォーラム・ヨコハマレポート 前編

横浜市には「共創推進室」という、企業・NPO・大学・町内会・市民活動団体など多様なプレイヤーとの連携を促進し、新たな価値を創ることを目指す専任組織があります。民間事業者が公民連携に関する相談ができる「共創フロント」窓口を設置したり、以前公共R不動産でも紹介した公共空間オープン化に向けた取組を引っ張っているのもこの共創推進室。2019年1月17日には、その創設10周年を記念して「共創オープンフォーラム・ヨコハマ」が開催されました。内容盛りだくさんのイベントでしたが、その中から「ヨコハマ式公共空間活用促進」のセッションの様子をお届けします!

会場の様子

まずは、登壇した4つの企業の方々の取組をご紹介。

①「都市型ドッグ・ライフスタイル」による、地域コミュニティづくりとは
(株式会社ドッグラン・ラボ 執行役員古川正男さん)

株式会社ドッグラン・ラボ 執行役員古川正男さん

トップバッターは、普段は新横浜公園でドッグランを運営する株式会社ドッグラン・ラボの古川さんです。昨年4月には、愛犬家のためのイベント「横浜ドッグウィーク2018」を初開催。なんと、2日間で1万8千もの人々が来場したそう!横浜ベイクォーターなどの主要会場をシーバスでつなぐことで回遊しやすくしたり、来場者が店舗で特典を受けられる「ドッグウェルカムショップ」という周辺店舗を巻き込む仕組みをつくったりと、「街」そのものが舞台となり、様々なプレイヤーが関わりやすい工夫が満載のイベントだったようです。運営は民間8社の実行委員会形式で行われ、ドッグラン・ラボが事務局を務めたとのこと。

他にも普段から愛犬家のマナー啓発を積極的に行うなど、ドッグラン運営にとどまらない地域での役割を担うドッグラン・ラボ。印象的なのは、「ただドッグランをつくるだけでは、地域と良いコミュニティはできません!」と力強く話す古川さんの言葉。ドッグランでは、鳴き声や糞尿、アレルギーなどのクレームを受けることもあるそう。「愛犬家もそうでない人も満足できる地域づくりを行うために、愛犬家・地域住民・周辺事業者をつなぐ“人”を大切にしたとりくみを意識しています。」と古川さんは話します。

今年も「横浜ドッグウィーク2019春」として、4月13日から開催。最終日20-21日の2日間は「Marine Dog Party」を臨港パークで開催します。今回は横浜市交通局と連携し、ペットと一緒に乗れる市営バスをチャーターしたそうです。ペットとともにある暮らしの充実のために奮闘するドッグラン・ラボの取組に今後もぜひご注目ください。

②地域巻き込み型&発信型でつくる公園のかたち
(横浜緑地株式会社営業部 長嶺美枝子さん)

続いてのお話は、神奈川県内8つの公園の指定管理などを行う、横浜緑地株式会社の長嶺さん。「地域の特徴を踏まえた公園運営を最も大切にしている」という同社が指定管理する公園がいくつか紹介されました。

横浜緑地株式会社営業部 長嶺美枝子さん

例えば、横浜市庁舎移転など今後も大きな変化のある横浜市中区の日ノ出川公園。こちらは、指定管理を開始した2005年当時は不法投棄や不法占拠が多かったそうで、まずは公園美化を徹底的に推進。昔は植物も少なかったそうですが、今では、住民や近隣の幼稚園と一緒に花壇をつくる活動や、住民向けの寄せ植え教室を開催するまでに。「花とみどりを通じて、人と人をつなげる公園になりたい」という長嶺さんの言葉にもあらわれているように、公園という場所がたくさんの人のつながりの場になっていることがうかがえます。
また、特に広域避難場所に指定されている公園では、防災への取組にも力を入れているそう。万が一のときに迅速な対応をするための、顔の見える体制づくりを目指した「防災スマイリングフェア」という町内会・警察・消防と連携した防災イベントを定期的に行っているとのこと。

他にも、植物の魅力を伝えるフラワーマルシェを開催したり、公園で採れた蜂蜜を近隣の小学校と連携して商品化したり、音楽グループ「ゆず」の生誕の地と言われる岡村公園ではファンのみなさん向けのイベントを開くなど、各エリアや公園の特色を生かした活動があるようです。住民参加型の公園づくりを目指す同社の活動は、公式ウェブサイトにも詳しく紹介されています!

③新しいモビリティによる、新しい都市体験の提案
(セグウェイジャパン株式会社取締役マーケティング部部長 秋元大さん)

続いては、セグウェイジャパン株式会社の秋元さん。現在セグウェイは、ヨーロッパやアメリカを中心に普及が進み、空港やショッピングセンターでのパトロールや荷物運搬、観光客向けのツアーなどでの活用が広がっています。

セグウェイジャパン株式会社取締役マーケティング部部長 秋元大さん

セグウェイの良さとして、有害な排気ガスが出ない環境にやさしい面や、楽に移動できることで業務効率が良くなる面などがよくあげられます。しかし秋元さんによれば、「セグウェイスタイル」と呼ばれる「思わずにこにこしてしまう」という効果もあり、それが地域の魅力向上のために実はとても有効だとか!セグウェイは、直立したまま他の人とコミュニケーションが取れ、シニアの方々でも楽に乗りこなすことが可能です。そんな老若男女問わない、新しいモビリティによる新しい都市体験ができるセグウェイは、結果的に「体験したその地域のことが好きになる」ことがとても多いそうです。秋元さんによると、アメリカでは45以上の公道でセグウェイでの走行が可能で、トリップアドバイザーで公開されているセグウェイアクティビティは1000以上。リピーター率の高いアクティビティとして人気があるとのこと。

日本では2000年代後半からセグウェイジャパンを中心にした実証実験が開始され、横浜市でも2017年から、みなとみらい21中央地区や新港地区での実証実験を行っています。ネックのひとつが、公道走行のための法整備。欧米諸国でも行政と企業が連携した規制緩和などが行われているそうですが、横浜市でもそのための実証や検討をこれから進めていく段階とのこと。今後の横浜セグウェイツアーに注目をしていきたいですね!

④公共と民間の橋渡し役。「公・公・民」というこれからの公民連携
(株式会社相鉄ビルマネジメント営業統括部長 永井伸五さん)

ラストは、一般社団法人横浜西口エリアマネジメントを立ち上げた、株式会社相鉄ビルマネジメントの永井さん。横浜駅西口周辺と、相鉄沿線における公共空間活用事例についてのお話です。

株式会社相鉄ビルマネジメント営業統括部長 永井伸五さん

例えばパルナード通りでは、歩行者天国を活用したイベントを実施。道路に人工芝を敷き、「アウトドアリビング」というコンセプトのもと、テントの中で地域の方々とのアウトドア会議やストリートBBQを行うなどのイベントを行ったそうです。

また、横浜西口エリアマネジメントは、横浜市から「道路協力団体」の認定を受けたそう。「道路協力団体」とは、道路の身近な課題解消や、利用者のニーズ対応に自発的に取り組む民間団体を支援し、地域の実情に応じた道路管理の充実を図ることを目的とした制度で、2016年に始まりました。それにより収益を上げるイベントを道路空間で実施できるようになった同社では、みなみ西口空間を活用した物販イベント「ヨコハマポップアップアベニュー」を開催。

単に面白いコンテンツを実施するだけではなく、規制緩和のきっかけをつくったり、横浜市内外のボランティア人材を巻き込む仕組みを整えたりと、公共空間活用の新しいモデルになることを意識していることが伝わってきます。「公の領域と民の領域は、どうしても距離感があります。わたしたちのようなエリマネ団体が間に入り、公と民の間があることで、公共空間活用はもっとうまくいくのではないか? 公・公・民という連携の形があるのではないかと考え、活動を進めています。」(永井さん)新しい公民連携の形を切り開く、今後の取組にもぜひご注目ください!

後半では、一般参加者のみなさんも交えた議論の様子をレポートします!

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