2019年7月22日に、ロンドンは史上初の国立公園都市(National Park City )になると宣言しました。
国立公園都市とは?
国立公園といえば、アメリカのイエローストーン国立公園や、日本なら知床や屋久島など、都市とは正反対、手つかずの大自然がある場所を思い浮かべますが、国立公園都市とは一体…?
国立公園都市とは、ロンドンをより緑で、健康で、野性味あふれる空間にするための、場所であり、ビジョンであり、ムーブメントのこと。具体的には、ロンドン市長が2050年までに樹冠率(単位面積当たりの枝や葉が茂っている部分の割合)10%増・市内の50%を緑地にするという目標を掲げています。
この運動は、2013年に、地理の先生だったDan Raven Ellison氏が、国立公園の考え方を都市にも応用できないか、と思いついたのがはじまりだそう。緑豊かな空間は、人々を心身ともに健康にし、空気をきれいにし、野生動物の棲み処、子どもたちの遊び場となり、気候変動リスクに立ち向かい、都市にもっと多くの喜びをもたらす。そんな良いこと尽くしの連鎖を生み出すためには、人々のマインドセットを変えることが必要ではないか。自分が国立公園の中に住んでいると思えば、もっと積極的にその環境を愛で、楽しみ、気にかけ、よりよくするためにコミットしたいと思うのでは?そんな思いで市に提案したプランに、市も関係団体も大乗り気。そしてちょっと荒唐無稽とも思えるこの壮大な構想が生まれたのです。
世界有数の緑豊かな都市ロンドン
既にロンドンには3,000の公園があり、市の面積の47%、1572㎢が緑地といわれています(※)。13,000種以上の野生動植物が生息し、金融街の高層ビルからはハヤブサが飛んでいるのが見えるのだとか。ガーデニング大国でもあり、人々の園芸熱は相当なもの。コミュニティガーデンやシティファームもいたるところにあり、マンションでも外廊下に野鳥用の餌箱が置いてあるのをよく見かけます。お天気が変わりやすいこともあり、ちょっとでも日が差せばすぐ外へ、日本人から見ると、本当に公園をはじめとした屋外を楽しむのが上手だなぁと思わずにはいられません。
しかしロンドンは、現在約9百万人の人口が、2050年には11百万人になるといわれており、より過密に開発が進むことが予想されています。また自治体の予算削減のため、公園の維持管理予算は減る一方。緑地は多いものの、荒れていたり使われていないものも目立ちます。そのため、このムーブメントでは量だけでなく質を高めることも目標に。まずはとにかく緑を楽しんでもらうため、7月20日から29日まではスタートウィークとして、130以上の団体の協力のもと、300を超えるアウトドアイベントがロンドン市内各地で開催される予定です。公園に行くだけで、ベランダの植木鉢に水をやるだけで、あなたも立派なNational Park City Maker、という気軽さに、ついつい参加したくなります。
東京も目指せる?
現在この運動を牽引しているNATIONAL PARK CITY FOUNDATIONは、国際憲章も作成中で、グラスゴー市、ニューキャッスル市がすでに次の国立公園都市を目指しており、アメリカやオーストラリアの複数都市も関心をもっているのだとか。
東京都によれば、東京のみどり率(緑が地表を覆う部分に公園区域・水面を加えた面積が、地域全体に占める割合。5年ごとに東京都環境局が調査。)は23区で19.8%、多摩部も含めた都全域では50.5%(2013年時。ロンドンは水面を含めると49.5%)。実は意外と緑豊かな東京都。でも使えない、または使われていない場所が沢山あるせいで、都市の印象はだいぶ違うかも。まずは楽しむところから、はじめてみてはいかがでしょうか。