公共R不動産の頭の中
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日本でも取り入れたい、台湾の公園における「日陰」のデザイン

「今日は猛暑日です。熱中症に注意しましょう」連日のようにニュースで伝えられ、身の危険を感じるほどの暑さが続き、子供たちが公園で遊ぶことも難しくなっている2023年の日本の夏。日本より7月の平均最高気温が約5℃高い台湾に旅行に行った際に感じた、街中や公園の日陰の多さと、遊具の配置の違い。そんな台湾の公園について公共R不動産の金子がレポートします。

新北市にある綜合運動公園。日陰に遊具が配置されている。 

台湾の魅力の一つである公園

私は、台湾が好きで、ここ数年は、コロナの期間を除き年に2回くらいのペースで通っています。こんなに何度も同じ国に旅行に行くことはあまりないのですが、台湾の魅力にすっかりハマって、今年の6月に行ったばかりにもかかわらず、次はいつ行こうかなと考えているくらい好きです。台湾の魅力と好きなところはいろいろあるのですが、特に好きなのが公園です。

2022年11月に行った時に発見した新北大都会公園は、衝撃的で2022年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間にも選ばせてもらい、その後podcast「公共R不動産の頭の中」でもお話しさせてもらいました。

綜合運動公園。ライオンがモチーフの滑り台。滑る部分の上についているのが日除け。 
左 7.7kmの新北大都会公園!土手を活用した滑り台が30種類以上。台湾の代表的な動物をモチーフにしているようでかわいい。 右 新北大都会公園。最寄りの三重駅からなんと滑り台で降りて行ける夢のような公園。
左 橋の下で行われているマーケット「重新観光市集」。 中 フルーツ屋さん。生のライチや旬のマンゴーが食べることができる6月末〜7月はフルーツ好きにはおすすめ。 右 食品・雑貨・骨董品を取り扱うお店だけでなく、床屋さんや屋外マッサージ屋さんなどもあり、活気があって楽しい。

台湾の公園の好きなところはたくさんあるのですが、

・向かい合って配置されているベンチ
・子ども向け遊具と健康遊具の配置の仕方と距離感
・バリエーション豊富な健康遊具
・無料で使えるスポーツ施設の多さ(特にバスケットコート)
・日陰を用いた空間デザイン

などがあります。

なにより健康遊具を使って運動している大人や、おしゃべりしているおばあちゃんたちなど公園を利用しているのが、子どもや子どもがいる家族だけでなく、誰もが居場所がある空間になっているところが特に好きです。

左 近所の方が公園のベンチに座って話しているのを特に夕方くらいになるとよく見かける。 右 ベンチに誰かが椅子を持ってきて設置している風景もよく見られる。
左 エアロバイクのように漕ぐと水が出てくる健康遊具。スマホで運動の結果を記録&ランキングに参加も可能。 右 屋外に設置されたフラフープ。誰でも利用可能。

日陰を活用した遊具の配置と
遊具に日除けをつける工夫

台湾に行くたびに、大小さまざまな公園に立ち寄って、散歩したり、休憩したり、健康遊具を使ってみたりしていると、台湾に住んでいるような気分になります。そんな風に過ごしているうちに気づいたのが、台湾の公園は木が多く、日陰を作る工夫がしてあって比較的涼しい!ということ。

よく見ると、日本だと公園の真ん中に配置されているような遊具が、木陰に配置されていたり、遊具の上に日除けが設置されていたり、暑い国で公園で過ごす工夫が行われていることに気づきました。

日陰に設置された遊具。この日も35℃くらいの気温だったが、日陰は比較的涼しく、多くの子供が遊んでいた。
東京と台北の気温の違い © WeatherSpark.com

台北と東京の7月の平均気温を比べると、その違いは約5℃。台北の平均最高気温は33℃です。ウェザーニュースの記事によると、日本で33℃の気温の時に滑り台などの遊具の表面温度を調べるとなんと約70℃にもなり火傷の危険があるとのこと。温暖化が進み気温が高い日が増えている日本でも、遊具への日除けの設置や、配置の見直しが必要になってきているのではないか。と感じました。

左 日本の公園。直射日光が当たり、朝の時点ですでに熱くなっていた。 右 遊具に日除けはなく、木陰はあるが、うまく活用されていない
台湾の公園の日陰を作る工夫。木陰に遊具を設置できない場合は、日除けが遊具や子どもの遊び場の上に設置されている。
左 日除けは風が通りやすい素材でできている。風が吹いた時にファサーと揺れる様子も楽しい。 右 特に熱くなりやすい滑り台の上には日除けが設置されていることが多かった。

日差しと降雨を避けるための工夫とパブリックマインド

1年を通して温暖で季節によっては雨が多い台湾では、公園以外でも昔から日差しと降雨を避けるための工夫がされてきたようです。

街中の店舗が連なっている場所では、通りに面している1階の部分が商店街のアーケードのような屋根「騎楼(亭仔脚)」になっているため、日差しや雨を避けながら歩くことができます。私は、「公共空間である歩道にお店がはみ出ている!自由だ」と思っていたのですが、実は歩道は私有地という扱いで、国の施策として各店舗の1階部分を公共空間として提供することを促しているため、そういった使い方をされているようでした。

国として施策をとっているとはいえ、私有地を公共空間として提供するというパブリックマインドが根付いているのがすばらしいなと感じました。

店舗と歩道が曖昧。店舗が歩道にはみ出していると思っていましたが、逆でした。台湾を歩いていていいなと思う風景の一つです。

また、公園のベンチに椅子を足してみたり、自分たちの使いやすいようにカスタムしていたり、パブリックスペースの使い方が寛容で柔軟なところも台湾の魅力の一つです。

もともとあるベンチに誰かの家にあった椅子を足している様子。

すっかり暑さに慣れたつもりで帰国しましたが、しっかり暑い日本に慣れることはなく日々を過ごしながら、日陰のありがたさと必要性を感じた旅でした。

温暖化が進む中で、日本より温暖な気候の台湾が取り組んでいる日除けの工夫を日本でも取り入れ、日陰をつくる空間デザインや設計が必要なのではないでしょうか。

参考

日本統治期の台湾における軒下歩道の利用と管理
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/79/699/79_1265/_pdf

駐車場や滑り台は70℃に!? 夏場の思わぬ火傷に注意
https://weathernews.jp/s/topics/202108/030155/

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本との出会いをインフラに。台湾のまちに散らばる「知恵図書館」

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