2024年度に公共R不動産のメンバーが実際に現地を訪れて「いいな」と感じた公共施設、パブリックスペースをご紹介します。公園や橋、文化施設、複合施設など、世界各地や日本全国に点在する多彩なスポットをピックアップ。気になる場所があれば、ぜひ訪れてみてください!
※公共R不動産による独断と偏見でピックアップしています。

ホントに『ホントカ。』っていうのか
ひと・まち・文化共創拠点ホントカ。(新潟県小千谷市)
https://hontoka.city.ojiya.niigata.jp/


広場や小さな公園のなかにある居場所
リスボンの広場や公園にあるキオスクQUIOSQUE LISBOA(ポルトガルリスボン)
https://www.quiosquelisboa.pt/

ヨーロッパ熱が高まり、ご飯がおいしいらしい!建物がかわいい!物価が比較的安い!というノリで決めたポルトガルへの旅。ほとんどのお店にテラス席があって、まちの人は外での時間を楽しんでいてうらやましい、と思いながら歩いているときに見つけた広場や公園にある同じ形のキオスク(カフェスタンド)。キオスクの前には、日よけのパラソル(木陰の場合もあり)とテーブルと椅子が置いてあり、夜でもオープンしていて、思い思いの時間を過ごす人たちがいて、パブリック空間の中に人びとの居場所があって、楽しげないい景色をつくっていました。調べてみると、場の活性化のために政府が建物をつくり、民間が運営しているとか。事業者がスモールスタートしやすい仕組みはやはり大事だなーと、日本の広場や小さな公園の使い方に思いを馳せました。

行ってみないとわからない広場の表情
オガール広場(岩手県紫波郡紫波)
https://ogal.info/information/area/ogal-square

いまさらオガールを初めて訪れて、やはり現地に行くべきだと実感しました。事業スキームだけじゃなく、オンサイト計画設計事務所が手がけたランドスケープがいろんな表情を見せてくれます。
紫波中央駅から3分ほど歩くと、エントランスとして出迎えてくれる広場。建物に囲まれ、イベントスペースや動線となるコートヤード的な広場。その先、主役となった広場の表情が一変します。
それまで平坦だった広場に起伏が生まれ、歩いているといつのまにか目線の高さが変わる。地形が空間をゆるやかに区分し、さまざまな視線の高さや居場所をつくり出す。図と地の反転。圧巻のシークエンス。言葉では伝えきれないので、いまさらと思っている方もぜひ行ってみてください。

町営駐輪場のリノベーション。町に溢れ出し循環するエネルギー
ひとつ屋根の下(埼玉県杉戸町)
https://www.hitoyane.org/

人口3万の小さな町にある小さな施設ですが、町に与えるインパクトは絶大!元々「3ビズ」というビジネスプログラムの拠点を、2024年にリニューアル。民間が独立採算で運営し、町に賃料を支払うスキームへ。機能は、誰でも商いにチャレンジできる一箱商店「100人商店街」・ポップアップストア・キッチン。ここには世話役と呼ばれるおせっかいな方がたくさんいらっしゃって(笑)、幅広い世代の人が行き交い、行くたびに新たな出会いがあります。昔の商店街って、きっとこういう感じだったんだよな〜と感じさせてくれる場所です。私たちも地域に入り込むとき、どんなプレイヤーがいるのかが最重要ポイントですが、ここはまさにプレイヤーを生み出す場所になっています。

都会に山を
アクロス福岡(福岡県福岡市)
https://www.acros.or.jp/

福岡の中心地・天神にある旧県庁跡にできた複合施設で、建築緑化の好事例としても知られるアクロス福岡。「アクロス山」という愛称でも知られ、頂上へ行くと登頂証明書ももらえるこの場所は、何を隠そう私が公共R不動産に入るきっかけのひとつ。『ひとの居場所をつくる: ランドスケープ・デザイナー 田瀬理夫さんの話をつうじて』(西村佳哲・著、筑摩書房・刊)で詳しく語られていますが、「都会に山をつくる」というコンセプトのもと、樹種をどうすべきか、どのように維持管理を行なうのか、行政との折衝など、背景を知った上で登るアクロス山は格別です。いつか役目を終え解体されるときも、植栽をブロックのように小分けにして移植できるなど「終わり方」がデザインされている点にも注目です。

身近な公共施設で環境とのつながりを体感する
エコルとごし(東京都品川区)
https://ecoru-togoshi.jp/

戸越公園に隣接する環境学習交流施設。都内公共建築物として初となるBELS(建築物エネルギー性能表示制度)の「Nearly ZEB」認証を取得。と、前置きが小難しくなりましたが、目の前の環境と私たちの日常のつながりを体感できる施設です。感性や創造性を刺激する体験展示やイベント等も豊富で、遊びながら自然に環境への関心や知識を習得できるのも魅力。設計者も「環境をいかに“⾃分ごと化”するか」をテーマにしたとのことで、施設のハードから運営のソフトまで施設の在り方や目指す姿が一貫しているのを感じられます。ターゲットが「未来をつくる子どもたち」と「子どもを支える人たち」ということで、コミュニティラウンジも7:00~21:30まで使えるので近隣の多様な世代が集っています。

橋の上で過ごす時間
桜城橋橋上広場(愛知県岡崎市)
https://quruwa.jp/spots/sakuranoshirobashi/

橋の上から望む岡崎の風景、川を吹き抜ける風。目を閉じるといまでもあのときの情景がよみがえってきます。岡崎市中心部を流れる乙川にかかる桜城橋橋上広場は、岡崎市の都市政策「QURUWA戦略」のもとに整備されました。通行幅約16m(2車線分の道路くらい!)、面積約2000㎡というスケールで開放感があり、無垢の木の質感も相まって気持ちのいい空間が広がります。屋根の下のベンチで休憩してみたり、川を眺めながらゆっくりと歩いてみたり。橋の上で「過ごす」という感覚は新鮮で、どこか不思議な心地よさがありました。早朝はこれ以上ないくらい清々しいし、夕暮れどきの哀愁ある雰囲気もいい。橋のふもとにある喫茶店「丘」もいい。橋の上の広場、ぜひ体験してみてください。
昨年版、2023年度 公共R不動産メンバーが行ってよかった公共空間もあわせてどうぞ。

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訪ねた日は残念ながら大雨で、地形を生かした屋上のテラスは早々に退散したのですが、建物内に入ると適度に分節されつつも回遊性があり、居心地よく柔軟に過ごせる空間構成が印象的。小さな子どもを連れた家族や年配がおのおの過ごす姿がありました。図書館だけでなく子どもの遊び場も市民活動もできる、暮らしの拠点感がありました。またリアル空間だけでなくデジタルでも参加できるのが特徴で、例えば「ホンダナ」は利用者自身のおすすめ図書リンクでweb上でみんなに共有できる。リアルもデジタルもデュアルに作用し利用者の創発的アクションを引き出す状態になりはじめたら、かなり面白くなりそうな予感がしたのでした。