2024年度に公共R不動産のメンバーが実際に現地を訪れて「いいな」と感じた公共施設、パブリックスペースをご紹介します。公園や橋、文化施設、複合施設など、世界各地や日本全国に点在する多彩なスポットをピックアップ。気になる場所があれば、ぜひ訪れてみてください!
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※公共R不動産による独断と偏見でピックアップしています。

多幸感溢れる広場
リベラシオン広場(フランス・ディジョン)
https://jp.paris-bistro.com/vins/bourgogne/dijon-bourgogne


公私の境を曖昧にする緑豊かな商店街
とおり町Street Garden(広島県福山市)
https://maeda-inc.jp/street-project-renovation/

江戸時代から400年以上続く本通・船町商店街に30年前につくられたアーケードの天蓋部分を撤去し、緑豊かなストリートへと生まれ変わらせたプロジェクト。存在自体は知っていたものの、ようやく訪れることができました。竣工から8年が経過した今、各店舗の前面に植えられた樹木はモリモリと成長してストリートに葉影を落とし、その存在が公私の境界を曖昧にしています。木々の間に置かれたベンチ(私設?)に子どもと腰掛けてひと休み。商店街組合のひとりひとりと合意形成をしながら進めるという気が遠くなりそうなプロセスを微塵も感じさせない爽やかな風景として、街中に馴染んでいました。訪れた日はまだまだ暑さの残る9月末でしたが、心なしか他のストリートよりも涼しく感じられたのでした。

温泉街のみんなのお風呂
山中温泉 総湯(石川県加賀市)
https://www.city.kaga.ishikawa.jp/ijyu/5/7232.html

石川県の加賀温泉郷には、「総湯(そうゆ)」があります。「総湯」は、公営の共同浴場。山代温泉には、明治時代の総湯を復元した写真の古総湯と、新築の総湯の二つがあり、いずれも地域の建材でこだわってつくられた空間です。取材中、加賀市の学童保育で子どもを預かって頂いていたのですが、取材後に学童の先生と総湯でばったりお会いしたり、インタビューで、イタリアのレッジョ・エミリア市に研修に行った保育園の先生が、「イタリアから帰ってきて、あーお風呂に入りたい!、と思い、みんなで入れる総湯があることの価値に気付いた」とおっしゃっていて、地域コミュニティの共有財産として、生活に根付いているんだな、と実感しました。

環八通り沿い、突如現れる小さな庭
グミの木の庭(東京都世田谷区)
https://www.instagram.com/guminoki_garden/

世田谷美術館に向かって環八通りを歩いていた時のこと。かなりの種類の植物が地植えされた緑地に出会いました。それぞれに手書きの札が付されていて、囲いはなく、中を覗くと小道や道具置き場が見えます。ただの植栽でも、公園でも、菜園でもない、これは何なんだ? 足元を見るとさりげなく「グミの木の庭」と書かれた看板が。たまたまいらっしゃった方にお話を伺うと、近所の数名でボランティアで手を入れていらっしゃって、東京都の「東京ふれあいロード・プログラム」にも参加しているそうな。車が行き交う環八通り、そしてその向こうの広大な砧公園に対峙して、野趣あふれる小さな庭が大切に育まれていることが、妙に印象に残ったのでした。

ものとひとの再生の場
IMMA(台湾・台北市)
https://www.facebook.com/openimma

台北市下町の萬華にある築70年近い集合住宅を整え直したコミュニティスペース「IMMA」。秘密基地のようなこの場所では、リペアステーション、作業所(工具や廃材、寄付された布までなんでもある)、就労支援所、リサイクルスポット、撮影スポット、カフェ、バー、イベントスペース、といったさまざまな機能が、ふんわり同じ空間に共存している。コンセプトは「ものとひとの再生の場」。近隣の方が修理やリサイクルを介してつながり、仕事をつくり出し、互いに支え合う関係が自然と育まれているこの場所は、ものだけでなくひとのつながりも再生していく地域の土壌のような場だなと感じたのでした。近所にほしい。

きっと市民の自慢の場所
Oodi ヘルシンキ中央図書館(フィンランド・ヘルシンキ)
https://oodihelsinki.fi/en/

2019年世界最高の図書館に選ばれた「Oodi」。図書館だけではなく、ゲーム室から3Dカッター、レーザーカッター、ミシン、刺繍機など作業できるスペース、カフェなどがある複合施設。使い方も多種多様。のんびり本を読んでいる人も、モノづくりに没頭している人も、おしゃべりに興じている人達も、来場している人々がこの場所をそれぞれ楽しんでいる。3層の建物をつなぐ螺旋階段には市民みんなが自由楽しんでもらいたいという気持ちが込められている、とても素敵なメッセージが。こんな素敵な場所があるなんてヘルシンキ市民が羨ましい。私が市民だったらきっとヘルシンキには中央図書館があるんだよ!と自慢してしまうだろう。

現代的な再生を遂げた稀有な名建築
ロームシアター京都(京都府京都市)
https://rohmtheatrekyoto.jp/

施設の老朽化により、2012年に閉鎖した前川國男設計の京都会館。約110億円の費用を投じて改修工事を行い、2016年にロームシアター京都として生まれ変わりました。館内には従来のホール機能に加え、蔦屋書店、スターバックスコーヒーやレストランが設けられ、ホール利用者以外も楽しめる施設となっています。3階には蔦屋書店による本の展示スペースがあり、地元の人々がくつろぐ姿も見られました。京都会館の外観で印象的なテラスにはレストランの座席が設けられ、岡崎公園を臨みながらランチを楽しむことができ、最高でした。文化的価値が認められながらも、老朽化により解体される建築が多い中、元の魅力を生かしつつ、現代に親しまれる施設として再生されたことに感動しました。

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パリから高速鉄道のTGVで90分程にある人口16万人のブルゴーニュ地方の州都ディジョン。その中心部にある市庁舎(旧ブルゴーニュ公宮殿)前にあるのが、リベラシオン広場。フランスではウォーカブルなまちとして有名なディジョンを象徴する広場ですが、20年前まで駐車場だったものを歩行者空間化したもので、半円形の広場を囲むようにカフェが軒を連ねており、この広場を中心にウォーカブルなまちを実現しています。
飯田美樹さん著書『インフォーマル・パブリック・ライフ――人が惹かれる街のルール』でも紹介されている場所です。子どもからお年寄りまで、朝から晩まで、市民が思い思いに集い楽しむ、こんな多幸感に溢れる広場は見たことがありません。