コロナ期間中に韓国ドラマにハマった私は、昨年に続き3回目の韓国旅行に行きました。今回はどこに行こうかなと探しているときに、偶然Instagramで見つけたのが「Seoul Outdoor Library/ソウル野外図書館」でした。なんだかおしゃれな取り組みだなと、調べてみるとソウル市が2022年から始めた取り組みで、昨年は170万人が訪れ、ソウル市民が選んだソウル市政策第1位にランクインしたという記事を見てますます興味が湧いてきました。
気になって色々調べていたら、ソウル市が気合いをいれて仕掛けているプログラムということが判明。
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ソウル野外図書館とは? (以下、ソウル市HPより引用)
ソウル図書館が運営する革新的な図書館モデル。ソウル図書館は、ソウルを代表する図書館として、持続可能な発展に向けて環境意識の向上に積極的に取り組み、利用者が自然と触れ合い、環境の価値を感じることができるよう、図書館前の広場に野外図書館を設置したことを皮切りに、世界初の「outdoor library」事業を大々的に拡大してきました。野外図書館は、図書館の中に入らなくても屋外で自由に本を読み、文化を楽しむことができる面白い(FUN)空間として、様々な協力が行われる政策プラットフォームの役割を果たしてきました。
また、図書館を取り巻く環境の変化に対応すべく、図書館という空間の概念を既存の物理的な建物から野外にまで拡大したことで「建物のない図書館(Buildingless Library)」とも呼ばれており、屋外という利点を利用して屋内図書館サービスの限界を克服した革新的な図書館サービスを提供しています。
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公共空間に携わるものとして「これは行かなくては!」と胸を高鳴らせて向かいました。
3カ所それぞれ異なる楽しみ方ができるソウル野外図書館
「ソウル野外図書館」の会場は3カ所。
ソウル広場、光化門(クァンファムン)広場、清渓川(チョンゲチョン)。
ソウルの金融機関やソウル特別市市庁などがあるソウルの中心部です。3会場のそれぞれの距離は、ソウル広場〜清渓川が徒歩10分弱、清渓川〜光化門広場は、徒歩8分程度。散歩しながら回るのにちょうどいい距離です。
今年は、4月に開館し11月10日までの期間限定で、「本読むソウル広場」は週4回(木~日)、「光化門本マダン」は週3回(金~日)、「清渓川本読む澄んだ川辺」は4月~6月、9月~10月の期間中、週2回(金~土)運営されています。
まず向かったのは、ソウル中心部にある歴史的な景福宮(キョンボックン)の正門である光化門の前にある光化門広場。
歴史的な建物の目の前にある広場に、カラフルな一人がけの椅子が並び、想い想いの本を手に取り、本を読む人。
統一されたデザインの本棚には、アート本や小説、詩集、漫画などさまざまな本が並びます。
この日は近くでマーケットなども開催されており、3ヶ所の中で1番、本を楽しんでいる人が多かった印象です。
次に向かったのは、清渓川。
駅を抜けて向かったのですが、(ソウル)支庁駅にも本棚と特設スペースが設置されていました。ここでも大きめのベンチが設置され、くつろぎながら本を読む人がいました。
会場と同じように、駅にもネオンサインを設置し、これから野外図書館が始まるという、わくわくする空間が演出されていました。
駅の地下通路を通り地上に出て少し歩くと、清渓川に到着します。
清渓川では、ギターを生演奏している人がいて、生演奏を聴きながら本が読めます。
椅子は発泡スチロールのような濡れても問題ない素材でできており、背もたれもあり、しっかりした作りでした。
飲み物等がおけるミニテーブルもあり、デザインも統一されていて、本を読んだり、おしゃべりしたり、ずっとここにいたくなる空間でした。
最後に行ったのはソウル図書館前のソウル広場。
ソウル広場の野外図書館には、子供の遊び場が併設されていて、ソファーも大きめで、他の場所よりもファミリーが楽しみやすい雰囲気がありました。
そのため、もちろん本を読んでいる方もたくさんいましたが、子供たちが遊ぶのを見ている方や、ソファーで休む方(中には本当に寝ている方も!)も多い印象でした。
会場にはステージも用意されていて、ステージコンテンツが開催されているタイミングもあるようです。
3カ所回ってみて、「本を読む」という行為を中心にデザインを統一しながらも、それぞれ少しずつコンセプトを変え、子どもの遊び場を用意したり、椅子などの備品を場に合わせて変えながら、集う人が自由に過ごせるように空間をつくっているのが印象的でした。
驚くべきは、この取り組みが、ソウル図書館が直接運営しているということ。(ウェブでの問い合わせからの回答によると)
このクオリティのものを直営できるコンテンツ力とマネジメント力の秘訣を知りたい…!
幅広い世代が利用する親水設備、木陰のベンチから見えてくる
まちなかの居場所のつくり方とは
会場の一つとなった光化門広場は、野外図書館の取り組み以外にも、公園全体が整備されたばかりでとても心地よい場所だったので散策してみました。
光化門広場は、2022年夏に芝生広場や歩行者専用道路を拡張、樹木を植え木陰を作り、ベンチや、水路を設置するなどのリニューアルを経て、今回の野外図書館のようなさまざまなイベント等で活用されています。
日本だと親水性がある場所というと子供向けのじゃぶじゃぶ池などが多いですが、浅めの水路になっていて老若男女が足をつけて涼んでいる様子が印象的でした。
また、木陰には様々なスタイルのベンチやテーブルが設置されていて、多くの人が利用していました。
ソウルのまちを歩いていると、木陰にさまざまなスタイルのベンチが設置されていたり、公園に浅い水路が設置されていたりしていて、そこには特定の年代だけではない、老若男女が利用する姿が見られました。
野外図書館に設置されたカラフルなソファーで本を読む人、木陰のベンチで本を読む人、寝っ転がりながら空を見ている人、椅子に座っておしゃべりする人、水に足をつけて涼む人。
老若男女が、それぞれの居場所を見つけ、それぞれの過ごし方で公共空間に「いる」ことが許されている。
そんな風景をソウルのまちなかで、たくさん見かけました。
それに加えて、ソウル市主催の野外図書館のようなイベント。
市民が想い想いの過ごし方ができるパブリックな居場所を提供するソウル市の取り組みが今後も楽しみです。
参考
光化門広場 4年間市民とともに構想したクァンファムン(光化門)広場、最初の一歩を踏み出す
韓国歴史・文化の中心地光化門広場